「年末年始の遅読のススメ」については、すでにこちらに書いた。

本探しに関連して、今日も一つ書いてみたい。

帰郷する方も多いこの季節、故郷の作家の作品から何か一つ選ぶのも楽しい。

あるいはその作家が好きだった作品から選ぶのもいい。

 

私は幼少期に神奈川県の茅ヶ崎市に暮らしたことがある。

それもあって開高健や、城山三郎などは勝手に愛着を感じている。

 

特に開高健に対しては、当時通っていたスイミングスクールでご本人を見かけた記憶もあり、茅ヶ崎時代の大事な思い出として残っている。

 

さて、開高に関しては、この休みの間にまた関連する興味深い一冊を読んだ。

 

『開高健の本棚』

https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309029900/

 

 

開高健が影響を受けた本、馴染みの品々、作家本人によるエッセイなど、カラー写真と共に大紹介されている。

 

著作だけではなく、作家本人にも興味がある方はぜひチェックしてほしい。

 

その中に、最後に開高健が特に愛してやまなかった本、厳選30冊が紹介されている。

 

80年代に発表されているから、選書のほとんどが古典の部類に入っている。

(「月刊カドカワ」1984年2月号~1985年5月号で八回にわたり掲載された『名著ゼミナール』より、30冊を厳選)

 

ただそれでも、どんな作品が彼の作風に影響を与えていたかが分かる大変興味深いリストになっている。

 

以下抽出して、抜粋していく。 P. 140~

 

「性欲、食欲と匹敵する想像の欲求を完全に満たしてくれる本、眠るのも惜しい、オシッコに行くのも惜しい、そういう本を巷にあふれる本のなかから厳選し、テキストとして、人間を語り、人生を語り、自然を語り、文学を語ろうというのが、当ゼミナールの趣旨である」

 

 

1.『ジャッカルの日』フレデリック・フォーサイス著

2.『元首の謀叛』中村正軌著

3.『スパイになりたかったスパイ』ジョージ・ミケシュ著

4.『白い国籍のスパイ』J・M・ジンメル著

 

5.『秘密諜報員 アルフォンスを捜せ』ホストヴスキー著

 

6.『アシェンデン 英国秘密諜報員の手記』サマセット・モーム著

 

7.『コン・ティキ号探検記』

 

8.『ハームレス・ピープル 原始に生きるブッシュマン』E・M・トーマス著

9.『ナパニュマ アマゾン原住民と暮らした女』エレナ・ヴァレロ著

10.『パパラギ はじめて文明を見た南海の酋長ツイアビの演説集』

11.『舌鼓ところどころ』吉田健一著

 

12.『最後の晩餐』開高健

 

13.『象牙の箸』邱永漢著

 

14.『食生活を探検する』石毛直道

 

15.『反乱するメキシコ』ジョン・リード著

 

16.『黒い夜 白い雪 ロシア革命1905 – 1917年』

 

17.『源氏物語 付現代語訳』紫式部著

 

18.『チャタレイ夫人の恋人』D・H・ロレンス著

 

19.『タイム・マシン』H・G・ウェルズ著

 

20.『海底二万里』ジュール・ウェルヌ著

 

21.『山椒魚戦争』カレル・チャペック著

 

22.『継ぐのは誰か?』小松左京著

 

23.『ミクロの決死圏』アイザック・アシモフ著

 

24.『一九八四年』ジョージ・オーウェル著

25.『大帝ピョートル』アンリ・トロワイヤ著

 

26.『完訳 釣魚大全』アイザック・ウォルトン著

 

27.『シートン動物記』シートン著

 

28.『野生の呼び声』ジャック・ロンドン著

 

29.『ティキシィ』C・W・ニコル著

 

30.『ソロモンの指環 動物行動学入門』コンラート・ローレンツ

 

さて、いかがだったろうか。

「新年最初の一冊探し」に参考になれば幸いだ。

 

 

なお、この『開高健の本棚』には、巻末に自らの生き方を通して体得した、ドキュメンタリストとしてのポリシーを掲げている。

 

題して『ドキュメンタリスト・マグナカルタ九章』。

 

曰く、

一 読め
二 耳を立てろ
三 目をひらいたままで眠れ
四 右足で一歩一歩歩きつつ左足で跳べ
五 トラブルを歓迎しろ
六 遊べ
七 飲め
八 抱け、抱かれろ
九 森羅万象に多情多恨たれ
補遺一つ 女に泣かされろ

 

笑、2023年の目標も見つかったかもしれない。

 

良いお年をお迎えください。