アメリカに David Perell という人が、よい文章を書くために何が必要なのかについて発信している。

 

ポッドキャストYouTubeで、様々な分野の文章化を招いて、その秘訣を聞くインタビュー番組を主宰している。とてもためになる。

 

最近はこのポッドキャストをずっと聞いているのだが、ある回のゲストが、Riva Tez という起業家・作家だった。

https://medium.com/@rivamelissatez

彼女は様々な分野で仕事をしていて簡単には紹介できない。
いろいろとネットで調べたところこういうことらしい。

 

「人工知能の分野、特に機械学習とその応用において知られている起業家であり専門家。
 彼女は、技術、イノベーション、ビジネスの交差点に焦点を当てたさまざまなベンチャーやプロジェクトに関与してきた。
 AI技術を前進させ、実世界の問題を解決するための実用的な使用に対する彼女の貢献で認識されている。
 AIにおける仕事に加えて、スタートアップとベンチャーキャピタル分野においても活動しており、新興の技術会社を支援し、指導している。
 技術の未来に対する洞察と、起業家精神は、彼女をテクノロジーコミュニティにおけるもっとも注目すべき人物にしている」

 

ということなのだが、わかりやすくいえば、すでに Forbes 30 under 30 list にも選出されている、超創造的なクリエイターといった感じかもしれない。

 

母校のUCL(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン)のHP には、こう紹介されている。

 

 10歳のとき、リヴァは母親とともにホームレスのシェルターに身を寄せたが、14歳のときにソーシャルハウジングに移った。
 「私の子供時代はちょっと奇妙で不規則だった…。私は、母や友人、そして世の中全体が良くなることを望んでいました。すべてを変えることは不可能だと思ったことはなかった。起業家精神は物事を変えるためのひとつの手段だが、他にもたくさんある。」と彼女は言う。

 奨学金を得て名門女子校に入学したリヴァは、消費者心理を学び、15歳で家具の見本市で屋外用流し台を売る仕事に就いた。
 経営陣全員よりも多く売り、15,000ポンドの手数料を得たリヴァは、母親をウェスト・ロンドンのフラットに住まわせた。
 それ以来、彼女は母親の家賃を支払っている。

  • https://www.ucl.ac.uk/campaign/case-studies/2019/jul/alumni-stories-breaking-mould-riva-tez

 

 

さて、そんなRivaとDavid との会話で興味深いポイントがたくさんあった。それを David がうまくまとめてくれている。

勉強になったので、こちらにもメモを残しておきたい。

 

 

●情熱は私たち全員を詩人にする。心を込めて書けば、類語辞典は必要ない。言葉は新鮮に出てくる。

●みんなが麻痺しているとき、全てが大きな音になる。人々がもはや繊細な微妙さを感じることができなくなったため、ポップカルチャーは騒がしくも虚しいものになった。Rivaは言う:「私はNetflixを見るよりも、オデッセイアを百回読む方がいいわ」

●なぜ毎日Netflixを見るの? 人類の歴史全体を読むことができるのに。

●私たちはほとんどのニュースをスキップして、長い間存在しているものを読むべき:聖書だけでなく、アエネーイスやオデュッセイアも。

●古代の著者たち、例えばエウリピデスやホメロスは、Rivaのお気に入りの作家、アイン・ランドと同様のことをした:彼らは異なる世界観を持つ人々の衝突を記録した。これは、哲学を書き、読み、理解する古典的な方法:具体化されたドラマを通じて。

●節度よりも熱狂的な執着を選ぶ。Rivaは彼女の好奇心、研究、または書き物を無理に押し付けようとはしない。でも彼女は自分のカレンダーを解放し、そう願うとき好奇心を解き放ちます。

●Rivaは数年ごとに『肩をすくめるアトラス』を再読する。彼女はこれを15年間行っており、毎回本の中で新たな、過小評価された事実を発見する。私たちは「終わりのない今」に閉じ込められており、常に過去24時間で制作されたコンテンツを消費しているが、私たちの世界観を形作った偉大な本を再訪することははるかに良い投資収益をもたらす。

●Rivaは、同質で合理化されたミニマリズムの現代的な崇拝(書き物にも現れる)にうんざりしている。中世の人々は信仰と遺産に駆り立てられ、私たちがボーイング747に乗って見に行くほど美しい都市や大聖堂を建てた。現代の人々は地味な便利さと効率性を最適化し、ほとんどの作家は同じ公式に従っている:平凡な言葉、短い文、そして明らかな直感を正当化するための研究論文。

●プラトンは美は自然の優越性を説いた。このメッセージは、何よりも平等を崇拝する私たちにとって不快なもの。しかし、美、細部、卓越性を最大化しようとする不平等な世界の方が、私たちが等しく落胆し、迷っている世界よりも良いと思う。

●「天才」という言葉は「ジニー(精霊)」と関連している。ラテン語で、「genius」は誰かが生まれた日から存在する付き添いの精霊を指す。

●創造性についてのこのような神秘的な話し方は流行り廃れたけど、理性、論理、合理性、懐疑主義の時代にしばしば過小評価される、そのエソテリック(秘境的)な側面がほぼ間違いなく存在している。神聖なインスピレーションに心を開いてほしい。

●Rivaは、創造性がカオスへの開放性を要求する理由について「人々が創造的に考えようとしているのを見るとき、あらゆる形態のカオスを許容することに対するこの巨大な心理的障壁があることに気づく。もしかすると、創造性は少しのカオスを受け入れることを少なくとも要求するのかもしれない、たとえカオスが決して来ないのだとしても。」

●もっと頻繁に一人でいること。あなたが孤独の中にいるときは、孤独の中に留まってください。電話を開かないでください。Rivaは時々、彼女の考えを整理し、思考を透明にするために朝に8マイル歩く。

●知的な不妊は学校で始まります。人々は試験で予定された答えを吐き出すことに対して報酬を受け取り、それはオリジナルな思考ではない。私たちは機械的な繰り返しを何よりも優先し、私たちが得るのは想像力豊かな作家ではなく、無意識のドローンなのだ。

●Rivaはかつて11世紀の医学教科書を読んだ。彼女にとって取り分け興味深かったのは、書が美しく、図表が印象的であったこと。それに対し、現代の教科書には乾燥したデータが多く、美的な魅力がない。

●Rivaはこれを「スポーツブラ症候群」と呼ぶ — 誰もがL.A.でスポーツブラを着て歩いているのは、誰もドレスアップする必要を感じないからであり、誰もが努力しない世界では、退屈以外に何が得られるのだろう?

●いつから努力することが恥ずかしいことになったの?

●科学はすべてが論理ではない。しばしばそれは奇妙な場所、夢、そして偶然の中にあるインスピレーションです。Riva:「科学的進歩はしばしば偶然によって生み出されます — 誰かがここで何かを読み、奇妙な会話があり、そして、ほら、全世界が永遠に変わります。」

●Rivaの家には彼女の好きなリルケの引用が壁にかかっている:「あなたに起こること全てを受け入れなさい、美しさも恐怖も。」この受容性は、創造的な仕事をしたいと思う人にとって前提条件となる。オリジナルな作品は常に新しい経験への開放性に先立っている。

●経済的な不況を忘れて — Rivaは私たちが「創造性の不況」に苦しんでいると言う。

●書くことは言葉で絵を描くこと。論旨をつなぎ合わせているのは確かだけど、同時に雰囲気を引き出している。文章の形式的で論理的な側面が、詩や魂を圧倒してはいけない。

 

どれも印象的な言葉だった。

番組を聞きながら普段は考えない神秘性について深く考えさせられた。

我々は分かりやすく、今すぐに、対効果があるものに思考が偏りすぎている。

「ネットフリックスを見るくらいなら、オデュッセイアを100万回読むわ」には鳥肌が立った。

 

Rivaが毎年読むという『肩をすくめるアトラス』はこちらの紹介の通り。

『肩をすくめるアトラス[1]』(かたをすくめるアトラス、原題: Atlas Shrugged)は、1957年のアイン・ランドの4作目の小説である。ランドの最長にして最後の小説であり、ランドが自身の手がけたフィクションの中で最高傑作と見なしていた作品である[2]。サイエンス・フィクション[3]、ミステリ、及び恋愛小説[4][5][6]の要素を含んでおり、自身の思想「オブジェクティビズム」について、ランドのフィクション作品の中では最も詳しく述べている。

先週の3連休に気軽に読もうと思ったのだが、日本語訳版を図書館から借りたら、二段構えで1270ページを超える大著だった。

 

ダイエットに取り組んでいる人は、自分の体にどんな食べ物を入れるかを意識していると思う。

自分もそうだ、だからこの感覚はわかる。

でも、自分の頭、魂にどんなものを入れているかをどれだけの人が考えているだろうか。

 

オデュッセイア』も読み終えていないし、しっかりダイエット内容を考えたい。

 

『肩をすくめるアトラス』アイン・ランド 著