YouTube の「Huberman Lab」をよく聴いています。
スタンフォード大学の神経科学者 Andrew Huberman が、最新の脳科学をもとに、睡眠・集中・ストレス・習慣などについて語る番組です。
彼は私の HP でも取り上げたことのある科学者で、Life Hack 的なことを、しっかりと科学的根拠に基づいて解説してくれるので、その番組はアメリカはもちろん、世界中で大人気となっています。
今回は「Habits(習慣)」という回を聞いていて、なるほどと思わされたポイントがいくつもありました。
さらに、良い習慣を定着させる具体的な方法が紹介されていました。
よく知られている通り、習慣が人生をつくります。
しかし「三日坊主」で終わる人もいれば、淡々と続けて成果を積む人もいる。
この違いはどこから生まれるのだろう?
今週、Huberman 教授のポッドキャスト番組 Huberman Labで「習慣形成の科学」について聴き、この問いへの答えが驚くほどクリアになりました。
自分のメモもかねて、その内容を整理してみたいと思います。
そして後半では、
「21日で習慣化を強力に進める Huberman 式 6つの習慣メソッド」
も紹介します。
特に、
来年こそは良い習慣を身につけたい!
とお考えの皆さん、ぜひ読んでみてください!
2026年をまったく別の年に変える内容だと思います!
フェーズ 1:起床〜8時間(挑戦タスク用)
フェーズ 2:起床9〜14時間(穏やかな習慣向き)
フェーズ 3:起床15〜24時間(睡眠と回復)
ステップ 1:21日間を「習慣形成キャンプ」にする
ステップ 2:毎日「6つの習慣候補」をリストアップする
ステップ 3:6つのうち「4〜5個できれば合格」とする
ステップ 4:21日経ったら、「どれが残ったか」を観察する期間に入る
1. 習慣は「神経回路の配線」の結果である
Huberman は、まずこう説明します。
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私たちの起きている時間の最大70%は、習慣的な行動でできている。
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習慣とは、脳が何度も経験した行動を“省エネ化”のために自動化した結果。
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歯磨き、メールチェック、朝のコーヒー、ジムに行く/行かない、SNSを開く(これは無自覚の人が多い)
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これらは「繰り返し」によって脳の回路が強化され、意識しなくても動くようになります。
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ここまではよく聞く話かもしれませんが、Huberman はさらに重要な指摘をします。
習慣の正体は「神経可塑性(neuroplasticity)」、つまり経験によって神経回路が組み替わること、だというのです。
これは、良い習慣も悪い習慣も、最終的には「この状況ではこの行動が起こりやすいように、脳が配線されてしまった結果」である、という視点です。
おもしろいですよね。
習慣というのは、能の中にすでに組み込まれた結果である、ということ。
つまり、
習慣ができるかどうかは根性とか意志力ではなく、脳と身体の「状態」が決めている。
これが本質です。
つまり、良い習慣も悪い習慣も、神経回路が「そのほうが効率がよい」と判断して結びついた結果、ということ。
習慣とは「性格」や「意志力」ではなく、結局のところ、
脳の配線の結果起きている自動化行動
ということになります。
2. 目標ベースの習慣と、アイデンティティベースの習慣
習慣には、ざっくり言うと二種類ある、と彼は言います。
1. Goal-based habits(目標ベースの習慣)
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「週4回、有酸素運動をする」
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「毎朝10分、瞑想をする」
といった、その行動をやったかどうかがそのままゴールになるタイプ。
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2. Identity-based habits(アイデンティティベースの習慣)
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「自分は運動する人間だ」
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「自分は学び続ける人間だ」
というアイデンティティと結びつけた習慣。
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目標ベースの習慣だけだと、チェックボックスを埋めるゲームになってしまいます。
一方で、
「これを続けることで、自分はどんな人間になりたいのか?」
というアイデンティティと結びつけると、習慣は長続きしやすい、といいます。
3. なぜ人によって「習慣化の速さ」が違うのか?
「習慣は21日で身につく」といったフレーズをよく目にしますが、研究データをきちんと見ると、現実はもっとばらつきがあります。
2010年のある研究では、同じ行動でも、習慣化にかかる日数は 18〜254日と人によって大きく違うことが示されました。
たしかに、ばらつき過ぎ・・・。
でも神経回路に組み込まれているわけですから、個人個人違うのは当然ですよね。
この個人差を説明するために、Huberman は、「Limbic Friction(リムビック・フリクション)」という概念を導入します。
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Limbic Friction = 行動を起こすまでに必要な「起動エネルギー」の大きさ
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具体的には、自律神経の状態(不安で落ち着かない/だるくて動けないなど)によって、
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「やろう」と思ってから「実際にやる」までの摩擦が大きくなったり、小さくなったりする。
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つまり、習慣化がうまくいくかどうかは、その人の「根性」の問題というよりも、神経状態とフリクションのマネジメント
の問題でもある、という見方です。
言い換えると、
「やろうと思った瞬間に感じる精神的な摩擦」
(=体が重い、やる気が出ない、逆に焦りすぎて集中できない状態など)
をどうコントロールするか、ということ。
要するに、
「やりたいのに体が動かない」原因の正体、
を把握せよ、ということ。
この摩擦が大きいほど、習慣化は難しくなります。
そして、摩擦が生まれる理由は2つ:
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Alert 過多(興奮しすぎ・不安で集中できない)
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Calm 過多(疲労・眠気・だるさ)
この「脳と身体の状態」が、行動の難易度を決めるのです。
性格や根性の問題ではないんですよね。
状態の問題、ということ。
4. まず知っておきたい“習慣を支える3つのフェーズ”
Huberman は1日を 3つのフェーズに分け、それぞれの時間帯に最適な習慣があると言います。
ここから、Huberman らしい神経科学の話が出てきます。
一般的な自己啓発本では、
毎日、朝7時になったらこれをやりましょう。
という「時計ベース」の習慣づくりがよく推奨されます。
しかし Huberman によると、
長期的に見ると「時間」そのものよりも、「その時間帯に脳と身体がどんな状態になっているか」の方が重要
だと言います。
そこで彼は、1日24時間を次の3つのフェーズに分けることを提案します。
フェーズ 1:起床〜8時間(挑戦タスク用)
朝は自然と
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ドーパミン(やる気)
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アドレナリン(集中)
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ノルアドレナリン(行動)
が高く、「摩擦に打ち勝つ力」が最も強い。
→ 最も難しい習慣はここに置くべき
例:
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本当に続けたい運動
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苦手な読書・学習
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クリエイティブワーク
フェーズ 2:起床9〜14時間(穏やかな習慣向き)
この時間帯は セロトニン優位になり、落ち着いた集中に向く。
→ 軽めの習慣・気分の良い習慣をここに
例:
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日記
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語学の復習
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散歩
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音楽の練習
フェーズ 3:起床15〜24時間(睡眠と回復)
ここは習慣づくりではなく、習慣の“定着”を司る時間帯。
低照度で過ごし、深い睡眠を確保することで、朝と昼に行った行動が神経回路として固定される。
睡眠こそ最強の習慣形成ツールと言っても過言ではないといいます。
5. Lynchpin Habits:他の習慣を連れてくる「中核習慣」
また、重要な概念として、Huberman は Lynchpin Habits(リンチピン習慣)を挙げます。
(Lynchpin(リンチピン)=車輪や部品を固定する「要のピン」)
Lynchpin Habit リンチピン習慣 とは、「自分が好きで、やると他の習慣まで連鎖的に良くなる習慣」のこと。
Huberman 自身の例では、朝の運動(筋トレやランニング)がそれに当たるといいます。
これをやることで
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仕事中の集中力が上がる
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睡眠を大切にしようとする
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食事や水分にも気を使うようになる
といった、他の良い行動がつながってくるからです。
ポイントは、「自分が好きで続けやすいもの」をリンチピンにすること。
つまり、最初に攻略すべきは「続けやすい・好きな習慣」です。
嫌いな行動を無理やり「要」にしても、まず続きません。
私たちは、難しい習慣を最初にやろうとするから挫折するのです。
6. 21日×6習慣メソッド:あえて「4〜5個できればOK」にする
ここまでが背景だとすると、ここからは いよいよ実践編 です。
Huberman が今回紹介していた方法は、シンプルで、とても手軽。
面白い設計になっています。
ポイントは1つ:
まず、やりたいことを6つ書くだけ。
Huberman はいいます。
深く考えなくて大丈夫です。
6つすべてを毎日やる必要はありません。
ここでの目的は「習慣のタネをつくること」。
ステップごとに、詳しく見ていきましょう。
ステップ 1:21日間を「習慣形成キャンプ」にする
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まず、21日間を「新しい習慣をインストールする集中期間」と決めます。
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21という数字は、研究上の「平均的な期間」に近いから、という位置づけです。
ステップ 2:毎日「6つの習慣候補」をリストアップする
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この21日間、上で説明したフェーズに分けて、毎日6つの習慣候補を書き出します。
例えば・・・
フェーズ 1:朝に向く習慣(難しめ)
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朝の運動を10分だけする
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集中仕事(Deep Work)を30分やる
フェーズ 2:昼に向く習慣(軽め)
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語学アプリを5分だけやる
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日記を1行だけ書く
フェーズ 3:夜に向く習慣(整える)
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スマホを見る時間を減らす
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寝る前に本を1ページ読む
これで6個ですね。
ステップ 3:6つのうち「4〜5個できれば合格」とする
ここがこの方法の肝です。
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「6つ全部やれた日」だけを正解としない。
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むしろ、1日4〜5個できれば成功と見なします。
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抜けた日があっても、「翌日に倍やって取り返す」必要はありません。
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これを心理学では habit slip compensation (できなかった分を翌日以降に埋め合わせをするという概念)と呼びますが、それをやると、逆に長期継続の妨げになる、とされています。
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目的は、
「特定の行動」だけでなく、「毎日いくつかの良い習慣をこなす」という「メタ習慣」を神経回路に刻むこと
にあります。
(メタ習慣:「メタ(高次の)」+「習慣」で、習慣を作るための習慣、習慣をより効果的・持続的にするためのシステム構築)
ステップ 4:21日経ったら、「どれが残ったか」を観察する期間に入る
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21日間の「キャンプ」が終わったら、
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次の21日間は「オートパイロット(自動操縦)期間」として、自然と続いている習慣がいくつあるかを観察します。
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おそらく、
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6つすべてが完全に定着する人は少なく、
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2〜3個が「ほぼ自動で続く習慣」になっている、という形が多いはずです。
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もし、6つ全部が21日+21日で安定してできるようなら、そのとき初めて、新しい習慣を追加する。
このように、「最初から全部完璧にやろうとしない」前提を組み込んでいるところが、現実的で面白いところだと感じました。
しかも脳の動きとも合致しているところも、信頼できます。
7. 悪い習慣は「直前」ではなく「直後」で書き換える
最後に、悪い習慣の壊し方についても、印象的な話がありました。
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スマホをダラダラ見てしまう
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不必要なお菓子をつい食べてしまう
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SNS を無意識に開いてしまう
こうした習慣は、たいてい「気づいたときには、もう始まっている」のが問題です。
そこで Huberman は、
悪い習慣を「やる前」に止めるより、
「やってしまった直後」の数分を使って書き換えたほうが現実的だ
と提案します。
具体的には、
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悪い習慣をやってしまったと気づいたら、
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直後に、簡単でポジティブな行動(代替習慣)を必ずくっつける。
例:
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スマホでダラ見してしまった
→ 気づいた瞬間に、必ず「1分だけストレッチする」「1行だけ日記を書く」などをセットにする。
これを続けると、脳の中では「悪い習慣単独の回路」が、「悪い習慣 → 良い習慣」という二段階のパターンとして再配線されていきます。
直感的には「悪いことをしたのに、良い習慣というご褒美をあげている」ように感じますが、実際には、回路そのものを書き換えるための「フック」として、直後の時間を使っている イメージです。
悪い習慣を“叱る”のではなく、
直後に別のルートを作り直す。
これが大事です。
おわりに:習慣は「性格」ではなく「設計」の問題
Huberman の話を聞いていて感じるのは、習慣は「意思の強さ」や「性格」で決まるものではなく、
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1日のフェーズ(状態)の設計
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Limbic Friction (リムビック・フリクション)のマネジメント
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Lynchpin Habit (リンチピン習慣)の選び方
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「21日×6個、内4〜5個できればOK」という現実的なルールづくり
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悪い習慣の「直後」に代替行動を差し込む工夫
といったシステム設計で開発すべきもの、ということです。
私自身も、この21日×6習慣メソッドを参考にしながら、
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Phase 1(朝)には「一番フリクションの大きいこと」
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Phase 2(午後)には「ゆるやかな学び・整える習慣」
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Phase 3(夜)には「睡眠の質を上げるための準備」
を少しずつ組み込んでいきたいと思います。
もし、何か新しい習慣を身につけたいと思っている方がいたら、「時間ではなく状態で設計する」「6つのうち4〜5個できれば合格」という、このHuberman的な視点を、どこか一部だけでも試してみてはいかがでしょうか。
ぜひ、いっしょにこの年末から取り組みをはじめましょう!
新年には2つでも3つでも、自分の習慣として組み込まれたものがあるとうれしいですよね!
来年が大きく変わるはずです!■
参考元:The Science of Making & Breaking Habits | Huberman Lab Essentials