特にリーダーシップ分野における研究で知られるビッグネームに、それぞれの人生を振り返ってもらい、ストーリー仕立てでリーダーシップの真髄について語らせた一冊。

 人生の物語の中で考えることで、活きるリーダーシップとは何かが真に迫る。

 机上のリーダーシップ理論ではなく、自らの人生に当てはめてこそ、リーダーシップは価値を発揮する。

 そしてリーダーシップとは学習の旅でもあることにも気づかせる、良書。

 

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 本書の語り手たちが投げかけてくる深い問いかけとともに、学びの旅に出かけていってほしい。本書が、人生に対していっそう大きな意味を見出すきっかけとなることを祈っている。そして、あなた自身の人生のストーリーから何かを学びとる一助となることを願ってやまない。

 ー マーシャル・ゴールドスミス 

 

P. 16 

◆リーダーシップについての教訓

 自分の人生を描きなさい ウォレン・ベニス(リーダーシップ論の権威。組織コンサルタント)

  ●あなたに生まれながらにそなわっている能力とはなんだろうか?
  ●そうした能力をいまどう活かしているだろうか。将来、それをどんなふうに活用したいと思っているのか?
  ●かつてお世話になった先生、両親、あなたを指導してくれた人々が誇らしく感じるような人生をあなたは送っているだろうか?

 

 学習するエグゼクティブ ジェームズ・C・コリンズ(企業経営コンサルタント)

  ●自分の持てる時間とエネルギー、リソースを、成果をあげるためではなく、学習するためにふり向けたら、あなたの人生はどんなふうに変わるだろうか?
  ●あなた自身の長期的、中期的、短期的な目標のなかで、成果をあげることを目的としたものはいくつあるだろうか? 学習を目的としたものはいくつあるだろうか?
  ●「学習」リストに上がった項目には、成果リストの項目と同じくらい重要なものがあるだろうか?

 

 本物のリーダーシップを確立する旅 サリー・ヘルゲーセン(リーダーシップ・コンサルタント)

  ●あなたは職業生活のなかで本当の自分を知ろうと求めたことがあっただろうか? 私生活のなかではどうだろう?
  ●自分を知ろうとするうえで、何かを恐れを感じなかっただろうか? そして恐れを乗り越えることができただろうか?
  ●自分自身が生み出した状況に対して、あなたは責任を持つことができただろうか? 今後そうなった場合にはどうか?

 

 真実を語れば力となる アラン・M・ウェバー(作家・雑誌編集者)

  ●会議中に発言したり、聞きにくいことを質問する際には、どんなリスクがあるだろうか? 逆に、発言もせず、質問しないことでどんなリスクがあるだろうか?
  ●あなたは異議を唱えたり、あるいは相手が嫌がるような質問をするだろうか? 他人がそのような行動をしたとき、あなたはどうするだろうか?
  ●所属する組織が集団的思考に凝り固まらないようにするためには、どうすればいいだろう?
  ●あなたが所属する組織の文化、雰囲気について説明してほしい。恐れが感じられるだろうか? あるいはリスクを恐れない勇気が感じられるだろうか? それとも慎重だろうか? そのような雰囲気にしたのはだれだろう? もっとみんなが率直に意見を言い、自覚を持って行動できるような組織に変化させるには何が必要だろうか?

 

◆学習ポイント

 リーダーシップについての教訓

 もしリーダーシップについて一番大切な教訓を学びたいと思うなら、まず私たちが自分らしい、いい生き方をする必要があるだろう。自分自身のリーダーになれないならば、他者を率いるリーダーになどなれるはずがないからだ。人々に自分をリーダーとして信頼してもらうためには、まず自分という人間を彼らに知ってもらう必要がある。本当の自分の姿を彼らに対して明らかにしなければならないのだ。それにはまず私たち自身が、自分に正直になり、そのうえで他人に対しても率直な態度で接しなければならない。

 自分に正直な人間になるためには、自分や他人に対して話し、行動し、考える際に、自己をいつわってはいけない。人生の大きな出来事や出会いがきっかけで、自分の本当の意見や気持ちに気づくこともある。そして真の自分になろうと努力をすることは、リーダーシップを確立するための価値ある旅でもある。

 ナンシー・M・ディクソンは著書『対話についての視点 Perspectives on Dialogue』(未邦訳、1996年)で、組織のなかで生きることのむずかしさについて次のように記している。

 「人々はみな自分をいつわることなく、本音で同僚とかかわりたいと思っている。そう望むのは当たり前であっても、そんなことが可能だろうかとだれもが疑問に感じている。職場が自分に必要なものを満たしてくれるわけではないと彼らは思っているのだ。こうして、出勤する際には、本当の自分の一部は自宅に置きざりにせざるを得ないという考えを、みんな受け入れるようになる」

 それぞれのストーリーと問いかけを読み、自分らしさとリーダーシップを求めるあなた自身の旅について考えてみよう。

 ❖あなたは自分の人生というストーリーの作者だろうか? あなたが描くのはどんな人生なのだろう?
 ❖これまでにあなたは本当の自分を発見したことがあるだろうか?
 ❖あなたにとって重要な意味を持つ人物や出来事は存在するだろうか?
 ❖真の意味でリーダーになるのはむずかしい、と感じられるような状況とはどんなものだろうか?
 ❖自分や他者に対して正直になれないことは、どのような点で問題なのだろうか?
 ❖あなたはいつわりのない人間関係をどのようにはぐくんでいるのか?