※本記事は Guardian 紙(2025年12月13日)掲載記事をもとに、note向けに再編集しています。

三回にわたって紹介してきたのは、

「作家が、なぜこの本を何度も人に贈ってきたのか」

という問いでした。

 

いよいよ最終回に登場するのは、詩、グラフィックノベル、政治寓話、古典、そして静かな現代小説。

繰り返し手渡されてきた理由が、ここにもあります。

ミーガン・ノーラン

(アイルランド出身の作家)

推薦書:ダニエル・ポピック『Fear of Description』

「私が圧倒的にいちばん多く贈ってきたのは、この詩集だ。

 詩から長らく距離を置いていた私が、声を出して笑い、最後には感情を揺さぶられた。

 友人に、恋人に、親に。

 詩集としては軽く、開きやすい。

 だが読み終えたあと、確かな余韻が残る。

 そのバランスが、この本を何度も人に渡させてきた。」

 

ニケシュ・シュクラ

(英国作家・編集者)

推薦書:『Ultimate Spider-Man』シリーズ(脚本:ジョナサン・ヒックマン)

「この新しい『スパイダーマン』シリーズは、多くの人に読まれるべきだと思っている。

 ヒックマンはキャラクターへの注意深さで知られる作家だ。

 数多くの再起動が行われてきた中で、このシリーズは、いまの時代に最もふさわしい形でスパイダーマンを描いている。」

サバ・サムズ

(英国作家)

推薦書:オルガ・トカルチュク 『死者の骨に鋤を通せ(Drive Your Plow Over the Bones of the Dead)』

「同じ本を何人にも贈るのは、どこか乱暴なことのようにも思える。

 それでも、この本は渡してきた。

 風変わりで、可笑しく、少し奇妙で、重要なことを語りながら、決して重くなりすぎない。

 キノコ狩りの舞踏会で、主人公ヤニナがオオカミの格好をして現れる場面を、私は何度も思い出す。

 どこか祝祭的な一冊だ。」

アンドリュー・マイケル・ハーリー

(英国作家)

推薦書:J.L. カー『A Month in the Country』

「何年も前、職場の同僚からこの本を贈られた。

 それ以来、私は同じことを繰り返している。

 失われた若さと、叶わなかった愛についての深く、可笑しく、哀切な中編小説。

 鋭く観察され、無駄なく書かれていて、一気に読めてしまう。

 すぐに喜びを与え、一生心に残る

 贈り物として、これ以上の条件はない。」

ジョナサン・コー

(英国作家/『The Rotters’ Club』)

推薦書:ロザモンド・レーマン『The Echoing Grove』

「私は時折、この本を贈る。
 いつか誰かが、物語の複雑さと、感情の切り込みの鋭さにおいて、これに並ぶものはほとんどない、と同意してくれることを願いながら。」

ニコラ・ディナン

(英国作家)

推薦書:ミン・ジン・リー 『Free Food for Millionaires』

「『パチンコ』より10年以上前に書かれた小説だ。

 2000年代のマンハッタンで生きる韓国系コミュニティを描いている。

 私はいま『ミドルマーチ』を読んでいるが、ジョージ・エリオットの影響が、この作品、とりわけここに色濃く見える

 広がりのある現代小説を探している人に、何度も渡してきた。」

ウィリアム・ボイド

(英国作家)

推薦書:フィリップ・ラーキン 『The Whitsun Weddings』

「私は20世紀以降の詩をよく読む。

 だが多くの友人は、現代詩を『難しい』『分かりにくい』と感じている。

 そこで私は、この詩集を渡す。

 いくつかの詩に印を付けて。

 たいていの場合、彼らはそこで引き込まれる。

 ラーキンは、最良のとき、誰に対しても語りかける。」

ヨミ・アデゴケ 

(英国作家・ジャーナリスト)

推薦書:エリザベス・デイ 『One of Us』

 「誕生日に贈ったこの本は、とても喜ばれた。

 だから、クリスマスにも贈ろうと思っている。

 英国の特権階級の家族を描いたダーク・コメディ。

 階級についての鋭い観察と、家族の混沌とした親密さが描かれる。

 何より、純粋に面白い。

フィリップ・サンズ

(国際法学者・作家)

推薦書:ジャン・ジオノ 『木を植えた男(The Man Who Planted Trees)』

「贈り物は、気持ちを明るくするものであってほしい。

 この短い物語は、一本一本、木を植える男の話だ。

 1953年に書かれたが、いま読むと、本当に大切なことが何かを思い出させてくれる。

 一時間もかからず読めて、これほどの温かさをくれる本はそう多くない。」

カーティス・シッテンフェルド

(米国作家)

推薦書:エリン・O・ホワイト 『Like Family』

「このデビュー小説を、私はすでに何人にも贈ってきた。

 友人に、姉妹に、近所の人に。

 ニューヨーク州北部で生きる三つの家族の物語。

 賢く、温かく、可笑しく、クィアな中年期が描かれる。

 作者と友人であることを差し引いても、これは本物の愛情から渡している一冊だ。」

連載を終えて 

30人の作家が挙げた本は、ジャンルも、長さも、時代も異なりました。

共通しているのは、ただ一つ。

それらが「何度も、人の手を渡ってきた」という事実。

作家が本を贈るとき、手渡しているのは物語だけではない。

• 世界の見え方 

• 思考の速度 

• 立ち止まる時間

だから彼らは、同じ本を、何度でも贈るのかもしれません。

皆さんも今回紹介されたものの中から、気になった作品をぜひ一冊でも二冊でも、手に取ってみてください。▪️

 

元記事: 

‘This extraordinary story never goes out of fashion’: 30 authors on the books they give to everyone

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