チゴズィエ・オビオマ(Chigozie Obioma)(1986年生まれ)という、ナイジェリア出身の作家をご存じだろうか。
現在、米・ネブラスカ大学 – リンカーン校でも教鞭もとっている現代(アフリカ)文学を代表する作家の一人。
小説『ぼくらが漁師だったころ(The Fishermen)(2015年)』 と『小さきものたちのオーケストラ(An Orchestra of Minorities)(2019年)』の著作があり、それぞれの出版年にブッカー賞にノミネートされている。
作品は30以上の言語に翻訳もされている。
独特でくせの強いストーリーテリングに魅かれる読者も多いようで、素敵な書評をいくつも目にした。
〇『ぼくらが漁師だったころ』チゴズィエ・オビオマ 著 今泉愛子(ライター)
https://www.pen-online.jp/article/001788.html
〇ラランド ニシダが「明日朝仕事あるのに5時くらいまで読んじゃった」本って?
https://www.excite.co.jp/news/article/Jcast_bookwatch_book19574/
ライターの石井 千湖さんは、『ぼくらが漁師だったころ』について、こう書かれている。
「単一の文化や言語でとらえられない複雑さに、アフリカ文学らしさがある」
https://allreviews.jp/review/1711
そのオビオマ氏がこの度、Creating Unforgettable Characters: An Experiment in Lasting Fiction – Fiction with Chigozie Obioma と題した3週間のオンライン創作ワークショップを開くという。
10/6 – 11/1 月曜日と水曜日。
「忘れられないキャラクターの創造:持続的なフィクションの実験」とでも訳したらよいだろうか。
案内を見た時、その独特な世界観、書き味、異文化で圧倒する複雑さなどにかねてから惹かれていたので、直接指導を受けられるなんて、なんと貴重な機会だろうと思った。
最近は作家と読者(小説家志望者)の距離が近い。
原稿まで見てもらえる近さ。
私は作家が自らの書き方、読み方を教えるといった特集が好きで、これまでにもたくさんワークショップに参加したり、記事を読んできた。
そこには文章術を学びたいという気持ちも、もちろんあるにはあるのだが、それよりも、彼ら彼女らが開陳する自らの極意を学ぶことで、作品ひいては作者自身をより理解することにつながると思うからだ。
そこには必ず作者の思想や姿勢が反映されるはずで、その「裏側」をのぞき込むことで作品を読むこと以上の、多くのことを学ぶことができる。
そしてそれはとても楽しい。
さてこのワークショップへの意気込み、ということで、作家・オビオマ氏からのメッセージ(拙訳):
「私はしばしば学生たちに、本が「使い捨て」の本になるのであれば、むしろ出版しない方がいいと伝えています。
小説が「使い捨て」になる要因は何かという質問は、6回のセッションのワークショップで中心的な役割を果たします。
したがってこのワークショップは、読者が最後のページをめくった後も心に残るキャラクターをどう創造するかを探求したいすべてのレベルの小説家のためのものです。」
このワークショップでは、キャラクター主導のストーリーを作成する方法、さまざまな種類のプロットとプロットがキャラクターの機能となり得る方法を探求していくという。
第1週:プロットとしてのキャラクター:フィクションの物語を最も効果的に推進するのに役立つプロットデザインは何か?
第2週:ナラティブの焦点:聖書からナラティブの簡潔さを学ぶ方法を探る。
第3週:拡張:構造、コンセプト、フレームなど。
と、なかなか濃い内容が予定されている。
10人までの参加者が参加する小規模なグループ設定で、以下のような体験をしていくのだそうだ。
・3週間にわたり、週に2回、各セッション90分
・各セッションで、カズオ・イシグロからジョン・ミルトンなどの作家による読書と他資料について討論
・オビオマ氏は、各参加者の原稿に対して詳細なフィードバックと編集ノートを提供(それぞれ最大3000語まで)。
ブッカー賞候補の常連作家、オビオマ氏自身が参加者の原稿に手を入れてくれるという。
ミルトンや聖書からも文章の例を取る、なんていうところもこの作家らしい。
これだけでもオビオマ氏の頭の中の、いろいろなことが見えてくる。
なんとも贅沢なワークショップ。
金額は、$895。(約13万円!)
加えて難題が一つ。
開催時間が、1-2:30 PM Eastern。
日本時間だと、朝の2時・・・。
ご興味(+根性)のある方はぜひご検討あれ。
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ご参考:
Chigozie Obioma Reads ‘An Orchestra of Minorities’ | The Booker Prize