※本記事は Guardian 紙(2025年12月13日)掲載記事をもとに、note向けに再編集しています。

今回も引き続き作家たちが贈ってきた本の特集でいきましょう。

第2回では、短編、詩、アンソロジー、静かな小説などを中心に、読み返され、手渡され続けてきた本が並んでいます。

 

今回はこちらの10名です。

カミラ・シャムシー
デレク・オウス 
アリ・スミス
ダイアナ・エヴァンズ
キャサリン・ニューマン
ジョー・ダンソーン
テッサ・ハドリー
ニナ・スティッベ
サラ・モス
エスター・フロイド

 

カミラ・シャムシー

(パキスタン系英国作家/『Burnt Shadows』)

推薦書:BBCナショナル短編賞アンソロジー(Comma Press)

「2010年以降、BBCナショナル短編賞の最終候補作は、毎年一冊のアンソロジーとして出版されている。

 その内容は常に多様で、唯一変わらないのは『質の高さ』だ。

 贈り物として優れている理由は明確だ。

 第一級のフィクションでありながら、物理的にもコンパクトで、手に取りやすい。そして翌年には、また新しい一冊を贈ることができる。」

 

デレク・オウス 

(英国作家/『That Reminds Me』)

推薦書:ロージー・ケリー『Kingfisher』

「年を重ねるにつれ、世界が手のひらに収まるような読書体験は、簡単には得られなくなる。

 だからこそ、そんな体験をもたらす本に出会うと、人に渡したくなる。

 『Kingfisher』は、クィアな愛と友情、他人の人生を書くことの倫理、血縁と選ばれた家族のあいだの選択を、静かで思いやり深く描く小説だ。」

アリ・スミス

(『秋』『冬』『春』『夏』)

推薦書:
・アンジェラ・カーター『Wise Children』

・ケイト・アトキンソン『When Will There Be Good News』

・ハインリヒ・フォン・クライスト『ミヒャエル・コールハース』

「アンジェラ・カーターの最後の小説は、跳ねるような喜びに満ちている。

 手渡すこと自体が楽しい一冊だ。

 ケイト・アトキンソンの作品は、初めて読む人にも信頼して渡せる。人間的で、満足感のある読後が残る。

 そして今年、最も多く贈ったのが

 『ミヒャエル・コールハース』だった。

 不正義が放置されたとき、何が起こるのか。

 1810年の物語は、今も現在形で読まれている。」

 

ダイアナ・エヴァンズ

(英国作家/『Ordinary People』)

推薦書:サラ・ホール『Sudden Traveller』

「短編小説の魅力は、短さではなく、跳躍にある。

 この短編集は、感情と想像力の跳躍が鮮やかで、言葉は美しく、きらめいている。

 少ない時間で、完全に別の場所へ連れていかれる。

 そういう体験が、この本を繰り返し贈らせてきた。」

 

キャサリン・ニューマン

(作家・エッセイスト)

推薦書:ウィリアム・スタイグ『Amos & Boris』

「『アモスという名のネズミが、海辺に住んでいました。』

 この書き出しを、私の家族は皆、覚えている。

 難破したネズミと、親切なクジラの友情。

 平易でありながら、魔法のようで、深く、ほとんど実存的ですらある。

 私はこの本を、何度も人に贈ってきた。

 ただ、いまはもう、ほとんど全員に渡してしまった。」

参考)https://www.ehonnavi.net/author.asp?n=938&srsltid=AfmBOopF3NWrl3q9145qBdaLB1Re3ZyJ_Tbs_83WbqNSzUR5K1rltwQq

ジョー・ダンソーン

(英国作家/『Submarine』)

推薦書:サム・リプサイト『The Ask』

「本当に気に入っている本は、手元に残らない。

 何度も人に渡すからだ。

 結果として本棚には、『それほどでもない本』だけが残る。

 『The Ask』は、読むことの楽しさそのものを思い出させてくれる。

 可笑しく、鋭く、生きていて、底流には暗い余韻がある。」

 

テッサ・ハドリー

(英国作家/『Late in the Day』)

推薦書:ルーマー・ゴッデン 『Kingfishers Catch Fire』『The River』

「私はルーマー・ゴッデンの小説を贈る。

 彼女の作品を、まだ知らない人が多いからだ。

 語りは温かく、魅惑的だが、視線は冷静で、真実に対して容赦がない。

 安心して読めるが、決して甘やかされることはない。」

 

ニナ・スティッベ

(作家/『Love, Nina』)

推薦書:ローズ・トレメイン『Restoration』

「クリスマスになると、私はこの本を贈る。

 主人公ロバート・メリヴェルは、誠実で、いたずら好きで、自己中心的で、何より愛すべき人物だ。

 17世紀の宮廷の華美と残酷さ。

 笑わせ、立ち止まらせ、次の瞬間には深く考えさせる。

 その振れ幅が、この本の力だ。」

サラ・モス

(英国作家/『Ghost Wall』)

推薦書:トーヴェ・ヤンソン『The Summer Book』

「ムーミンで知られるヤンソンは、短編小説の名手でもある。

少女と祖母を中心に、語られない『母の不在』を抱えた物語。

自然、遊び、沈黙。

小さなフィンランドの島の夏が、読む人の感覚を静かにひらく。」

 

エスター・フロイド

(英国作家)

推薦書:トーヴェ・ヤンソン『A Winter Book』

「クリスマスには、『The Summer Book』と対になる

 この短編集を贈る。

 ヤンソンの関心──

 島、海、小舟、芸術、そして老い── が、静かな物語として結晶している。

 老女二人が最後に家を閉め、鍵と、わざと混乱した指示書を残す場面は、長く心に残る。」


次回予告
※本連載は全3回です。
第3回では、残る10人の作家と、配られ続けた本を紹介します。

元記事:
‘This extraordinary story never goes out of fashion’: 30 authors on the books they give to everyone

 

 

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