特別対談 逢坂冬馬(第9回高校生直木賞)×佐藤究(第165回直木賞)

オール讀物2022年11月号

 

こちらの対談をとてもおもしろく読ませていただいた。

『「物語」が生まれる場所』と題して、逢坂冬馬さん(『同志少女よ、敵を撃て』)と佐藤究さん(『テスカトリポカ』)が、お互いの創作術や読んできた本について話し合っている。

 

下記、ポイントを忘れないうちに。

 

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佐藤さん:

・逢坂さんについてぜひ話しておきたいのは、タイトルセンスの秀逸さです。僕なりの分析として“優れたタイトルは十二音である“と。かつて大ブームになった名作『アルジャーノンに花束を』、しかり。
・松尾芭蕉「夏草や兵どもが夢の跡」にハマるようなら間違いない。

・(体系的な知識の整理について)“ゲシュタルトブック”と呼んでいるのですが、スケッチブックに関連資料や記事をどんどん並べて貼っていって、それを眺めるという作業をやっています。この小説用(『テスカトリポカ』)にはA4判で四冊くらいを三、四カ月かけて作った覚えがあります。

・(仕事について)楽しいというのは大事ですね。十年やっても飽きないことを見つけると、割とよい人生になる。

・向き不向きを自分で感じ取るのは大事だと思います。メンタルを崩壊させてまでやるべき職業っていうのはないんじゃないかぁ。

・(高校生におすすめの本)レイモンド・カーヴァーの作品で、村上春樹さんが訳した『Carver’s Dozen』という文庫本に収録されている「ささやかだけれど、役に立つこと」をおすすめしたいです。
小説が、文学がなぜこの世に存在するのかということの一つの解のような作品なので、ぜひ若いうちに読んでいただきたいですね。

 

逢坂さん:

・(体系的な知識の整理について)僕はまずテーマを設定したら、書きたいものや用語をばーっと単語で羅列していきます。
一から十まで完全に決めてから書き出すタイプなので、スタートとゴールを考えて、その間を埋めていきます。
僕にとってプロットは旅程表のようなものなので、遭難しないように「ここで乗り換え」「その後は船に乗って」と細かく予定を立てる。
いざ書き始めると、素通りするはずだったところに長滞在してしまったり、別の目的地に向かってしまったり、行程が変わってしまうのも旅と同じです。
でも、脱線したら脱線の方向を堪能しつつ、プロットの骨格は守っていくと、良いものが仕上がる感覚があるので、今回(『同志少女よ、敵を撃て』)はそれがうまく行ったかなと。

・(高校生におすすめの本)おすすめの本、というか僕の精神的な原点とよく言っているのが、『戦争は女の顔をしていない』です。
ソ連の女性兵士たちから聞き取った膨大な証言をまとめたノンフィクションで、初めて読んだ時に戦争を語ることの本質の一端を掴んだ感覚がありました。
ぜひ今、読まれて本です。

・(小説を書きたい人へのアドバイス)アドバイスできるような身でもないですが、小説を書きたい人は失敗を恐れず、楽しむことを第一にするのが長続きのコツです。
ある程度の読書量が必要かなとか、準備を整えてからとか考え過ぎず、とりあえずやってみる。

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いずれも大変勉強になるし、創作についてのお二方のスタンスがよく分かる興味深い対談記事になっていた。

 

 

オール讀物 2022年11月号
(文藝春秋)