引き続き、カズオ・イシグロについて。
Guardian紙に作家へのインタビューが掲載されていた。
‘AI will become very good at manipulating emotions’: Kazuo Ishiguro on the future of fiction and truth by Alex Clark
最近はAIを使って仕事をすることも多くなってきたこともあり、今後は創作といった芸術面においても大きな影響を及ぼすのだろうと考えていた。
そんな中、カズオ・イシグロへのインタビュー記事が出ていた。トピックまさにAI。
AIは感情を操る存在となるのだろうか? AIは人間の領域にどこまで入ってくるのか?
ノーベル賞作家カズオ・イシグロが、AI時代のフィクションの役割について語っている。
感情を揺さぶる力を持つ物語は、ポスト・トゥルースの時代にどのような意味を持つのか?
AIが感情を操る存在になりつつある今、作家の役割は変わるのか?
『わたしを離さないで』から20年、イシグロが今抱く創作への新たな懸念とは――。
早速内容を整理してみた。
1. AIが人間の感情を操作する能力を持つ時代が来る
- 現在、AIは主にデータ分析に焦点を当てられているが、今後は感情操作の技術が急速に発展するとイシグロは予測。
- AIは「怒り」「悲しみ」「笑い」などの感情を引き出す方法を学び、効果的に人間の心理に影響を与えるようになる。
- これは政治、メディア、商業の分野で悪用される可能性があり、特に懸念される。
2. ポスト・トゥルース時代におけるフィクションの役割
- これまでイシグロは「読者の感情を揺さぶる力」を自らの強みとしてきたが、近年、その力の危険性を意識するようになった。
- 「ポスト・トゥルース(脱真実)」の時代では、証拠に基づいた事実が軽視され、代わりに感情的なストーリーが「真実」として広まることが多い。
- これは政治運動やSNSアルゴリズムによって加速されており、作家の持つ「感情を動かす力」との関連性を懸念している。
3. AIがクリエイティブな分野に及ぼす影響
- AIは文学や芸術にも大きな影響を与えるとイシグロは警告。
- 作家やアーティストの作品がテクノロジー企業によって搾取されることを防ぐため、政府が介入する必要があると主張。
- 彼は現在の状況を「歴史の分岐点」と捉え、創作の自由と権利を守るための対策を求めている
4. フィクションが持つ「感情を動かす力」の倫理的ジレンマ
- これまでイシグロは「読者を泣かせる力」や「感動を生み出す力」で評価されてきた。
- しかし、同じ能力が政治家や企業によって悪用されれば、それは危険なプロパガンダになりうる。
- AIによって「感情的なストーリー」が大量生産される時代が来たとき、フィクションの価値はどう変わるのかを考えるようになった。
5. AI時代における物語の変容
- 小説家としてイシグロは、「歴史的事実」ではなく「感情的な真実」を描くことを重視してきた。
- しかし、AIが感情を揺さぶる物語を生み出せるようになった場合、フィクションの意義は変わるのではないかと疑問を抱いている。
- AI生成の物語が「本物の芸術」と区別できなくなれば、人間の作家はどのように価値を証明できるのか。
6. 文学のジャンルの変化とイシグロ自身の創作
- 1980年代の文学界では、SFやジャンル小説は純文学とは分けられていた。
- しかし、近年はその境界が崩れ、イシグロ自身も『わたしを離さないで』でディストピアやSF的要素を取り入れた。
- 若い世代の作家(デイヴィッド・ミッチェルやアレックス・ガーランドなど)が「ジャンルの壁を越える」動きを見せたことが影響を与えた。
- 『わたしを離さないで』はヤングアダルト小説的な要素を持ち、幅広い読者層に受け入れられている。
7. 自身の作風に対する自己評価
- イシグロは「自分は美しい文章を書く作家ではない」と明言。
- 彼の強みは「語り手の声を作ること」「雰囲気を生み出すこと」だと認識している。
- そのため、彼は一貫して一人称視点を用い、語り手の個性を通じて物語を展開する。
8. 小説との関係性
- 彼にとって、小説は「自分の一部ではあるが、完全に同一視するものではない」。
- 自分の作品を子どもに例え、「かつては近くにいたが、やがて独り立ちしていく存在」と表現。
まとめ:AIとフィクションの未来
カズオ・イシグロは、AIが「感情操作」に優れた時代が来ることで、フィクションの意義や倫理が問われるようになると警告している。
これまでフィクションは「感情の真実」を伝えることに価値があったが、AIがそれを模倣・拡張することで、人間の作家の役割が変わる可能性がある。
本来、人間の作家にしかできないと考えられていた感情といった領域にまでAIが入り込んできたときに、じゃあ、人間には何が残されているのだろうか。
さて、そんな矢先、OpenAI社のCEOサム・アルトマンがChatGPTに書かせた短編小説をXに載せていた。
こちらについても後ほど触れておきたい。■