「人生の意味って、どうやって見つければいいのだろう。」
年始にゆっくり考えたいですね。
この問いに対して、とても静かで実践的な答えを返しているのが、Arthur C. Brooks(アーサー・C・ブルックス)です。
彼はハーバード大学で教える社会科学者であり、作家であり、「幸福」や「意味」を研究しながら一般向けにも発信しています。
キャリアを音楽家としてスタートさせ、現在はハーバード・ケネディスクールとハーバード・ビジネススクールで教授職に就き、科学的知見をもとに、人がどうすればより良く生きられるのかを探求しています。
しかし彼自身、必ずしも“生まれつきポジティブな性格”ではないと語っています。
だからこそ、幸福や意味を「偶然得られるもの」ではなく、「生活習慣として設計できるもの」として捉えている点にアーサー教授の特徴があります。
そして自分が教えていることを自ら実践しています。
いくつかアーサー教授の著作を読んでいますが、この本が特に勉強になりました。
有限の人生をどう生きるか、についてとても良い示唆を与えてくれます。
今回は、アーサー教授が、Tim Feriss のポッドキャスト番組にゲストとして登場しています。
Tim によるインタビューから、その教えを紐解いていきましょう。
具体的に何をどうすれば、私たちは幸福になれるのか?
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1. 朝いちばんに運動する
アーサーは毎朝早く起きて、まず運動をします。
ウェイトと有酸素運動を合わせて30〜40分ほど行うと言います。
これは健康のためだけではなく、その日の集中力や精神状態の土台を作る時間でもあるといいます。
「気分が乗ったら動く」のではなく、「先に動くことで気分が整う」。
彼の一日の始まりは、ここから組み立てられています。
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2. 30分の静かな時間を持つ
運動のあと、アーサーは毎日ミサ(礼拝)に行きます。
これは宗教儀式というよりも、「反省と静寂の時間」として大切にされていると語っています。
彼はこう説明します。
毎日同じ形で、30分だけ静かに祈りや思索に向き合うことで、心に“定点”が生まれる。
これが、集中力や仕事の生産性に大きく影響する。
宗教である必要はありません。
ストア哲学の古典を読む人もいます。
大事なのは、古代の人々が“holy hour(聖なる時間)”と呼んだような静かな時間を持つこと。
重要なのは、「毎日、同じ形で静かに自分を整える時間を持つこと」です。
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3. 人生の意味は「三つの要素」でできている
アーサーは、人生の意味を次の三つに整理しています。
曰く、
幸福とは「楽しみ・満足・意味」という3要素でできている。
そしてその中でも“意味”が欠けると幸福は成立しない。
と説明した上で、意味そのものにも3つの「構成要素」があると語ります。
それが、
1. Coherence(首尾一貫性)
2. Purpose(目的)
3. Significance(存在価値)
Coherence(首尾一貫性)
なぜ自分の人生でいまの出来事が起きているのか、という物語を持てているか。
人生は毎日いろいろなことが起こります。
良いことも悪いことも、理不尽なこともある。
そのときに、
• ただの“偶然の連続”として受け止めるのか
• それとも、“自分なりの物語”として理解できているのか
この違いが Coherence だといいます。
アーサーはこう言います。
「説明できないまま生きることは、“意味のない放浪”に近い。」
そしてその「説明モデル」は、必ずしも客観的な正解である必要はない、と強調します。
• 宗教という物語で理解する人もいれば
• 科学的因果で理解する人もいる
• 中には陰謀論という物語を採用する人もいる
大事なのは、
「自分にとって世界が“全くのランダムではない”と感じられるかどうか」
という点なのです。
Purpose(目的)
次にPurpose。パーパス。
多くの人が「意味=目的」と混同しますが、Purposeは“意味の一部”にすぎないとアーサーは言います。
Purposeとは端的に、
「私は、なぜ今この行動をしているのか?」
に答えられる状態です。
• なぜ働いているのか
• なぜこの勉強をしているのか
• なぜこの人間関係を続けているのか
そこに方向性(Direction)やゴールがなければ、行動は“ただの作業”になってしまう。
アーサーはスペイン語の 「Rumbo(ルンボ)」という言葉を紹介します。
これは、
今いる場所から「どこへ向かうのか」を示す、航海の航路線
のこと。
• 完璧である必要もない
• 途中で変更してもかまわない
しかし、それでも
「私はこの方向へ向かっているのだ」という線を持てていることが重要
と語ります。
Significance(存在価値)
最後がSignificanceです。
これは、
「私の人生は、誰かにとって本当に意味があるのか?」
という問いに対する答えです。
ここで重要なのは、
• 「自分が偉大かどうか」
• 「成功者かどうか」
ではありません。
アーサーが言うのは、もっと静かな確信です。
• 家族が自分を必要としている
• 友人やパートナーの支えになっている
• 神に愛されていると感じる
• 誰かの人生に、小さくても貢献できている
こうした実感が、Significanceの土台になります。
もしこの問いに「分からない」「多分、意味はない」
と感じてしまうと、人は強い虚無感に襲われると指摘します。
ここが抜けてしまうと、
「自分がいてもいなくても、世界は同じなんじゃないか」
という虚無感が生まれてしまう。
だからアーサーは、この三つ目をとくに重要視しています。
人は
「自分の存在が、誰かの善の一部になっている」
という感覚を必要とするのだと思います。
三つを合わせたときに、「意味」は立ち上がる
まとめるなら、
• 世界は完全なランダムではない(Coherence)
• 私はこの方向へ生きている(Purpose)
• 私の存在は、誰かや何かの役に立っている(Significance)
この三つが重なったとき、私たちは「意味がある人生だ」と感じるようになる。
逆に、どれか一つでも欠けると、少しずつ心は不安定になる。
アーサーは、そう語っています。
そして、これは特別な才能のある人だけの話ではなく、誰もが自分の生活の中で少しずつ育てていける“心の栄養素”なのだと強調しています。
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4. 完璧を求めて探し続けない
アーサーは、「100%の確信を求めて探し続けるより、80%の確信で選んで生きるほうがよい」と話しています。
完璧な答えを探し続けていると、いつまでも現在に身を置けない。
どこかに“もっと良い何か”がある気がして、迷いが続いてしまう。
だから彼は、「ある程度の確信で選び、そこで生きる」ことを勧めます。
これは信仰や伴侶、仕事など、人生の重要な領域に広く当てはまる考え方ですね。
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5 それでも意味が見えない日は、携帯電話を置いて誰かを愛する
インタビューの最後、アーサーはこう語っています。
「もし今日、何をしていいか分からず、意味が遠く感じられるなら、デバイスをオフにして、誰かを愛しなさい。
愛は感情ではなく、行為であり、決断だ。
そうすれば、自分も相手も、世界も少しだけ良くなる。幸福とは、愛である。」
このメッセージは非常にシンプルですが、とても力強いものです。
意味は頭の中で生み出す抽象概念ではなく、
誰かに向けた小さな行為の中で育つ。
それが、彼の一貫した立場です。
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6. まとめ:今日からできる五つの行動
インタビューの内容を整理してまとめます。
1 朝に運動する(30〜40分が理想。短時間でも構わない)
そして、身体を動かすことで、その日の集中力と感情の基盤が整う。
2 毎日30分の静かな時間を持つ
祈り、瞑想、読書など形は自由だが、同じ形式で続けることが重要。
3 人生の意味を三つの視点で捉える
首尾一貫性、目的、存在価値。
4 完璧を求めて探し続けない
80%の確信で選び、そこで生きる。
5 どうしても意味が見えない日は、誰かを愛する行為を選ぶ
愛は感情ではなく行為であり決断。
おわりに
アーサー・C・ブルックス教授は、幸福や意味を「才能や運ではなく、訓練できる技術」として捉えています。
そしてその最初の一歩は、とても小さなものです。
例えば、
端末を閉じる。
体を動かす。
静かに心を整える。
そして誰かに向けて、優しい行為を選ぶ。
そこから、意味は静かに戻ってくる。
今回の対談は、それをあらためて教えてくれるものでした。▪️
情報元:
#841 : Arthur Brooks — Finding The Meaning of Your Life, The Poet’s Protocol, The Holy Half-Hour, and Why Your Suffering is Sacred (#841)
https://tim.blog/2025/12/24/arthur-brooks-meaning-transcript/