https://youtu.be/ffjF_rW8ARk

 

第97回アカデミー賞において、作品賞、監督賞、主演女優賞、脚本賞、編集賞の5部門を受賞した話題の一作。

華々しい評価を受けた作品だったので期待して鑑賞開始。

といってもアマゾンプライムで無料配信が開始になったから見ているくらいなので、熱望してみたかった作品というわけでもなく。

 

観了。

もう少し何かひねりがある作品があるかと思ったが、既視感のある物語。評価されるストーリーテリングとは、何を見せるか、よりも、どう見せるかの時代なのかも。

 

物語は、ネオンの光に包まれた既視感のある寓話として幕を開けます。

アメリカに住むロシアの大物武器商人の放蕩息子が酔った勢いで仲良くなったストリッパー・アノーラ(アニー)と結婚。

それを受け父親の部下で息子の取り巻きが慌てて結婚の解消に走る。それに抵抗する主人公アニー。

 

一部では女性の権利確立のための闘いを表現した作品との評価もあるようだが、これまでにも何回も描かれてきた社会の下辺で苦しみながら働く人物像から大きく外れた印象は受けず。既視感。

序盤に挿入される多くの性的なシーンは、心理的な親密さを深めるためというよりも、むしろ装飾的に映る。

二人の関係も、恋愛というよりは曖昧な共依存。物語の前半にあんなに性サービスのシーンを入れる必要はなかったと思うし、二人の間に徐々に性欲を超えた関係性への愛が芽生えるようなシーンも強く描かれなかった。

「多分、愛してると思う」といったくらい。

そここそ二人のもろい関係性を描写したんだ、といわれればそうですが、その薄氷は両親の到着と放蕩息子の気まぐれに踏みつけられ、そのまま壊れてしまう。

まあそうだよね、と。

 

慌てふためきながらも、できるだけ暴力に訴えずにアノーラを抑えようとするコミカルな取り巻きたちも、裏社会の人間として設定しなてくもよかったのでは。

ロシアのオリガルヒ vs 性産業で働く女性、と大上段に構えて投げてくるからどんな剛速球かと思ったら全体的にふわっとしたカーブで、肩透かしを食らった感じの映画。

ただ“性労働者の物語”として読むか、“アメリカン・ドリームの残響”として読むかで、印象は変わりそう。

 

一つとても良かったのは、アノーラ役のマイキー・マディソンの表情。

その何系ともとらえがたい、どこの国の人とも断定できない、不思議な顔立ちと豊かな表情、眼差しの深さが終始魅力的。

脚本には描き切れない感情を見事に映し出していたと思う。

彼女の存在感で持った139分間。■ 

/ Critique