閑話休題、本日はイノベーションについて。

 

イノベーションに興味のある方は、『WIRED』という雑誌をご存知だと思います。

 

『WIRED』はテクノロジーによって、生活や社会、カルチャーまでを包括した人間社会の「未来がどうなるのか」について考えるメディアです。

毎号世界の最新テックカルチャーについて紹介しているのに加え、この分野に関するブックレビューも充実していて、私もよく読んでいます。

 

この『WIRED』は1993年、アメリカ・サンフランシスコで創刊されてから、テクノロジーを通して社会や文化を切り取り、わたしたちの世界の「ありうべき未来像」について問いを投げかけてきました。

また、「ロングテール」や「クラウドソーシング」といった時代を象徴するキーワードを提唱してきたことでも知られています。

 

今日はそのWIRED誌の創刊編集長を務め、テック界のビジョナリーと称されるケヴィン・ケリー氏をご紹介します。

2021年10月に行われたケリー氏のインタビューでは、大企業がイノベーションを起こせない本質的な理由について指摘してこれがとても的を得ていました。

 

「企業の規模が大きくなればなるほどイノベーションが難しくなるのは、新しい突破口が見つからないからです。
そして端的に言うなら、成功すればするほど完璧さと(効率面での)最適化しか求めなくなるからでしょう。
自分たちがすでに成し遂げてきたことや、プロセスが最適になることを追及するようになるのです。」

(PHPオンライン 衆知より)

 

シリコンバレーでは、「前向きな失敗」という言葉があり、イノベーションは非効率さや失敗から学ぶことで起きると考えられています。

ケリー氏は、日本での状況についても触れ、失敗や再チャレンジがもっとしやすくなれば、イノベーションが起こりやすくなるだろうと指摘しています。

具体期には、「失敗会議」を開くのはどうだろうか、というのがケリー氏の提案です。

 

日本では、「失敗」という言葉には往々にして恥という感情が付いてきます。

しかし失敗した人が、自分の経験を前向きなものとしてとらえ、成功事例のように語り、共有することができれば、失敗が失敗で終わらず財産となります。

 

失敗事例だけを扱う会議を開催し、どのように失敗したかを競い、一番大きな損失を出した人に賞を授与する。

こうしたことができれば、失敗ともっと前向きに向き合え、イノベーションにつながる挑戦がしやすくなるのかもしれません。

 

私は以前、まさにこの通りに取り組んでいる、イノベーティブな企業を以前訪問したことがあります。

デンマークにある世界的製薬会社の研究開発ラボ部門です。

 

そこでは「失敗の殿堂」と呼ばれる部屋があり、これまで会社として社員として、失敗してきた数々の事例が展示されていました。

毎年、一番大きな失敗をしてしまった人を表彰し、記念品としてマクドナルドのハッピーミールが贈られるとのことでした。

 

全社的な大きな仕組みを導入するとか、高コストの仕組みを考えるということでなくとも、このように日々の仕事への見方を少し変えることで、イノベーションを起こすヒントというのは案外見つかるものなのかもしれません。

 

ケヴィン・ケリー氏による著書『5000日後の世界 すべてがAIと接続された「ミラーワールド」が訪れる』も出版されています。

気になった方はぜひこちらもチェックしてみてください。 

 

 

(Photo by Lance Lozano via Unsplash License)

 

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