最近、とても興味深い論文を読みました。
タイトルは少しドキッとします。

“I Wish I Hadn’t Worked So Hard.”
(こんなに働かなければよかった)

https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3810319

死の直前に最も多い後悔のひとつだと言われる言葉です。

でもこの研究は、単なる感傷ではなく、データで幸福の正体を解き明かしているものでした。

──「もっと稼げたら幸せになれる」
私たちはそう信じて生きてきました。

しかし論文の結論は、その“前提”を静かに覆します。

 

■幸福を下げていたのは「働きすぎ」ではなく、“もっと稼ぎたい” という姿勢そのもの

研究者たちは、労働時間や収入を調整した上で、人生満足度を統計的に分析しました。
その結果は下記のとおりです。

  • 収入が高いほど幸福度は上がる

  • しかし「もっと稼ぎたい」という価値観が幸福を大きく下げる

しかもこの「幸福を下げる効果」は、
収入が幸福を上げる効果の半分を打ち消すほど強い

つまり──

稼げば稼ぐほど幸せになるわけではない
「もっと欲しい」と思うほど幸せが遠のく

ちょっと残酷ですが、鋭い真理です。

 

■成功を追うほど、幸福が先延ばしになる

論文を読みながら、ふと自分の生活を振り返りました。

「あー、いつかFIREしたい、そのためになんとか働いていくしかない」
「もう少し収入が安定したら心が満たされるはず」
「成功できたら人生がやっと落ち着くはず」

そう思って走ってきました。

でも“幸せは成功の先にある” という前提で生きている限り、幸せはずっと未来に逃げ続ける。
成功が近づいたと思った瞬間には、次の目標がもう見えている。

走り続ける人生の中で、今日が消えていく

論文で示されたのは、そういう構造でした。

 

■幸福は、未来の報酬ではなく「今の生き方の質」に宿るもの

論文が浮かび上がらせたのは、たったひとつのシンプルな真理です。

幸福は、未来ではなく「現在の生活の質」の中にある

収入の額よりも、次のような要素のほうが人生満足度に直結していることがわかったといいます。

  • 心の余裕

  • 誰かとのつながり

  • 楽しみや体験の時間

  • 睡眠・食事・休息の質

  • 自分の価値に沿った働き方

当たり前のようで、でも忙しさの中で一番失われやすいものばかりです。

 

■では、今日から何ができるか?

「もっと稼がなきゃ」と思い続ける人生を終わらせるのは、実は大きな決断ではありません。

小さな選択の積み重ねで変わり始めます。

  • 仕事より先に睡眠を優先する日をつくる

  • 予定に「余白の時間」を意図的に入れる

  • 誰かと一緒に笑う時間を大事にする

  • 自分の好きなもの・感性を丁寧に扱う

  • “今日やってよかったと思えること”をひとつ増やす

こうした選択を重ねるほど、幸福は“未来ではなく現在”に戻ってきます。

成功を捨てる必要はありません。
ただ、成功のために人生を差し出す必要もない。

 

■最後に

もしかしたら私たちはずっと勘違いしていたのかもしれません。

成功すれば幸せになれるのではなく、
幸せに生きる人が成功していくのだと。

幸福はゴールではなく、日々の生き方の副産物
未来のご褒美ではなく、今日の選択の中に育つもの。

この論文は、それを静かに教えてくれている気がします。■

 

🔗 出典
“I Wish I Hadn’t Worked So Hard.” Greed and Life Satisfaction
SSRN Working Paper(2021) ‘I Wish I Hadn’t Worked So Hard…

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p id=”73e96da2-1c90-481f-80f0-97a1a8d25030″>https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3810319

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