ゴールドマン・サックスの古い推薦図書リストを見つけました(巻末リンク参照)。

資料には「GOLDMAN SACHS RECOMMENDED READING LIST」とあり、www.gs.com/careers の表記があります。

少なくとも2010年には金融コミュニティQuantNetでもGoldman Sachsの推薦図書として共有されていたようです。現在の社員向け必読書という意味ではなく、かつて同社のCareersサイトに関連して流通していた資料、と考えるのがよさそう。

いずれにしてもこれがなかなかおもしろいリストなんですね。どんな本がリストアップされていたのか。

金融機関の推薦図書なら、投資理論や財務分析の本が並んでいると思うかもしれません。もちろん、ベンジャミン・グレアムの『賢明なる投資家』なども入っています。

でも、私が面白なと思ったのは「失敗」を扱った本の多さでした。

ロジャー・ローウェンスタインの When Genius Failed は、ノーベル賞級の頭脳を集めたヘッジファンドLTCMが、なぜ破綻寸前まで追い込まれたのかを描いています。マイケル・ルイスの Liar’s Poker は、ウォール街の欲望と競争を内部から描いた作品ですね。

ほかにも、
Manias, Panics, and Crashes
Extraordinary Popular Delusions and the Madness of Crowds
Barbarians at the Gate
Den of Thieves
など、バブル、暴落、買収、金融犯罪を扱った本が並びます。

なぜ「失敗」を読むのか

金融は数字の世界です。
しかし、その数字を動かすのは人間です。

人は成功が続けば自信を持ちすぎます。
周囲が買えば自分も買いたくなります。
都合の悪い情報を無視することもあります。

だから過去の金融危機を読む意味があるのだと思います。歴史そのものを覚えるためではありません。
人間の判断が、どこで狂い始めるのかを見るために。

LTCMの破綻を知っていれば、高度なモデルがリスクを消してくれるわけではないと分かる。
バブルの歴史を知っていれば、「今回は違う」という言葉を少し疑えるようになる。

失敗の歴史は、未来のためのケーススタディになります。これは金融エリートだけではなく、すべてのリーダーに当てはまる考え方ですね。

自分の業界を批判する本も読む

もう一つ興味深いのは、ウォール街を美しく描いていない本まで推薦されていることです。Liar’s Poker も Den of Thieves も、金融業界の宣伝になるような作品ではありません。

それでも読む。

ここには、専門家にとって大切な姿勢があります。
自分の業界について、成功者だけを読まない。

批判者も読む。
失敗も読む。
内部からは見えにくいものを、別の場所から見る。

専門家とは何だろう

AIを使えば、金融理論の説明も企業分析も、以前よりはるかに簡単に手に入るようになりました。だからこそ、知識を持っているだけでは差がつきにくくなります。

重要になるのは、目の前の状況を見て、
「これは以前にも起きなかったか」
「何を見落としているのか」
と考えられることだと思います。

ゴールドマン・サックスの古い読書リストを見ながら、私は専門家とはなにか、について考えました。

一流の専門家とは、自分の専門についてたくさん知っている人だけではない。自分の専門を、外側からも見ることのできる人なのだと思います。◾️ 

Goldman-Sachs-Reading-List

 

参考情報

pic.twitter.com/5rnzzbjk8v

 

 


Originally published on note on 2026-10-05 06:11:27 JST.

/ Reading , ,