また値上げですね。。
最近、特に食料品の値上げのニュースを見るたびに、少し気になってたことがあります。

これだけ何でも高くなっていけば、人は結局、食べる量そのものを減らしていくのではないか。
→ 無理なダイエットしなくても痩せるのでは?!

スーパーで一品買うのをやめる。外食を一回減らす。有料の大盛りを頼まなくなる。以前なら何となく買っていた菓子や酒も、少し考えてから棚に戻す。

一回一回はたいした話ではないかもしれませんが、こういうことが何年も続いたらどうなるのだろう、と思いますよね。

「これくらい食べるのが普通だ」といういつもの感覚まで、少しずつ変わっていく、量が減っていくのではないか。もしそうなら、肥満や糖尿病のような生活習慣病にも、あとから何か変化が出てくるのではないか。

日本では2025年、消費者物価全体が前年比3.2%上昇したのに対して、食料は6.8%上昇しました。[1]
一方、二人以上の世帯が食料に使った金額は5.5%しか増えていません。[2]

つまり、食べ物の値段が6.8%上がったのに、家庭の食費はそれほど増えていない。同じものを同じ量だけ買い続けるのではなく、安い商品に替えたり、外食を減らしたり、買う量そのものを減らしたりして、どこかで調整している可能性があります。

これはそのまま食べる量が減ったという意味ではありません。高い商品から安い商品に替えた人もいるでしょうし、外食を減らして自炊にした人もいるでしょう。買い方が変わっただけかもしれません。

それでも、食費の上昇に合わせて家計の側が何かを調整していることは確かです。

類似の例でもっと極端なケースが、1990年代のキューバ です。
ソ連崩壊後、キューバは深刻な経済危機に陥りました。食料も燃料も不足し、人々の食事量が減りました。車や公共交通機関も十分に使えず、歩いたり自転車に乗ったりする機会も増えたそうです。

その時期、国民の平均体重は約5.5キロ減ったそうです。[3]驚異的ですね。その後、糖尿病や心疾患による死亡も減りました。

ところが、です。経済が回復すると、体重はまた増え始めます。過体重・肥満の割合は1995年の33.5%から2010年には52.9%へ上昇しました。その体重増加の時期には、糖尿病の有病率が116%、発症率が140%増えています。[3]

この例だけを見て「食べる量を減らせば健康になる」と言うのはちょっと乱暴なのかもしれません。食事だけでなく運動量も変わっていますし、何より経済危機そのものは人々にとって望ましい出来事ではありません。

ただ、国民全体の体重が数キロ動くだけで、病気の出方まで変わることがあるというのはとても興味深い。

2008年の世界金融危機を調べた研究でも、高所得国では景気後退後に一人あたりのエネルギー摂取量が減っていました。平均すると、一日約100キロカロリーです。[4]

100キロカロリーと聞くと、それほど大きな数字には思えないかもしれません。炊いたご飯なら約64g。茶碗一杯の半分にも満たないくらい。

けれども、毎日それが続き、しかも数百万人、数千万人に同じことが起きれば、人口全体ではかなり大きな変化になります。

そこで最初の問いにもどるのですが、私が気になってたのは、この先です。
人は意識してダイエットを始めなくても、周囲の環境が変われば食べ方を変えていく。値段が上がる。買う物が変わる。量を少し減らす。それを続けているうちに、その量が普通になっていく。

その結果、健康にも何か変化が出てくるのでは?

でも、ここにも厄介な問題がありました。
食費を削るとき、人が健康に悪いものから順番にやめるとは限らないんですね。果物や魚、野菜のように値段の高いものを先に減らして、安くお腹の膨れる食品を選ぶ人もいる。

実際、2008年の不況を調べたある研究では、菓子や清涼飲料が減った一方で、果物や野菜の摂取も減っていました。[4]

お金がないから食べる量が減る、そして健康になる、というほど単純ではないようなのです。

今の日本でも、物価高によって肥満が減り始めたというデータはまだ見えてきません。厚生労働省の2023年の国民健康・栄養調査では、20歳以上の男性でBMI25以上の人は31.5%でした。2019年以降、統計的に有意な増減はありません。[5]ただ、数年後には何か見えてくるかもしれない。

食料価格が高い状態が長く続いたとき、人はどこを削るのか。質を落とすのか。別の商品に替えるのか。それとも、本当に食べる量そのものを少しずつ減らしていくのか。

値上げはもちろん歓迎できるものではありません。
それでも、いま起きていることが家計簿の数字だけではなく、「どのくらい食べれば十分なのか」という感覚まで変えているのだとしたら、向き合い方は変わるかもしれません。その影響が見えるようになるのはずっと後だとしても。

せっかくなので、私は、食べる量を減らすという形で、この値上げラッシュと前向きに付き合っていこうと思います。
痩せるぞ。◾️

参考情報

[1]総務省統計局「Consumer Price Index Japan 2025」2025年の総合CPI +3.2%、食料 +6.8%。
総務省統計局:Consumer Price Index Japan 2025

https://www.stat.go.jp/english/data/cpi/158c.html?utm_source=chatgpt.com

[2]総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年平均結果の概要」二人以上世帯の食料支出について使っている資料です。
総務省統計局:2025年 家計調査報告 PDF⁠

https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/pdf/fies_gaikyo2025.pdf?utm_source=chatgpt.com

[3]Franco et al., BMJ, 2013:キューバの体重減少・再増加研究 平均約5.5kgの体重減少、過体重・肥満率33.5%→52.9%、糖尿病有病率・発症率の変化などの出典です。
BMJ:Population-wide weight loss and regain in Cuba⁠

https://www.bmj.com/content/346/bmj.F1515?utm_source=chatgpt.com

[4]Jenkins et al., 2021:2008年世界金融危機と食生活のシステマティックレビュー 41研究を対象とし、高所得国で平均約103 kcal/日の摂取減少を報告した研究です。
PMC:Impacts of the 2008 Great Recession on dietary intake⁠

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8084260/

[5]厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査」
日本の肥満率などの公的統計です。
厚生労働省:令和5年 国民健康・栄養調査 結果公表⁠

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_45540.html


初出:note、2026年10月2日。Fabio Caipirinha の恒久アーカイブとして収録(本サイト掲載:2026年10月15日)。原文:https://note.com/proper_clam757/n/n646e528bad70

カバー画像:日本の食料品店の店頭(CC0, Wikimedia Commons/出典)

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