最近、哲学者の Zena Hitz (ジーナ・ヒッツ)さんの対談をSubstack で読みました。
The Great books are for everyone と題したタイトルで、古典や本を読むことの大切さについて深く語られています。
(対談そのものは巻末参考資料をご参照ください)

彼女はアメリカのリベラルアーツ教育で知られる St. John’s College の教員であり、『Lost in Thought: The Hidden Pleasures of an Intellectual Life』の著者でもあります。

https://www.amazon.co.jp/Lost-Thought-Hidden-Pleasures-Intellectual/dp/B0824B74F9?tag=waciatdnd-22&source=dsa&hvcampaign=books&hvocijid=13999066671595197352–&hvexpln=m-dsas&dplnkId=15ad543e-6409-42ad-ac8d-ed49e673e90f&nodl=1&th=1&psc=1

しかし、私が興味を引かれたのは彼女の肩書ではありません。

彼女は大学の外に、世界中の人々が古典を読み、対話するための無料の学習共同体「Catherine Project」を立ち上げています。
これがすごいんです。

現在では毎学期1,600人以上が参加している。
参加条件は驚くほどシンプルです。
16歳以上であること。
それだけです。

学位もいりません。
専門知識もいりません。
必要なのは、学びたいという意志だけです。

対談の中で最も印象に残った言葉はこれでした。

There is no substitute for the act of thinking.
考えるという行為に代わるものはない

AIは本を要約できます。
大学は知識を体系化できます。
専門家は複雑な概念を説明できます。
しかし、考えることそのものを代行することはできません。

私はリーダーシップ教育に携わっていますが、本質は同じだと思います。

リーダーシップとは知識量ではありません。
判断力です。

そして判断力は、正解を覚えることで身につくものではありません。
歴史を読み、人間を観察し、異なる意見に触れ、自分で考える。
その積み重ねによってしか育たないものです。

だからこそ古典は、今でも価値を持つのだと思います。

答えを与えてくれるからではありません。
考える訓練を与えてくれるからです。

対談の中で Hitz は、「知的生活は誰のものか」という問いにも答えています。

彼女の考えは明快です。
知的生活は大学教授だけのものではありません。
博士号を持つ人だけのものでもありません。
本を読み、問いを持ち、自分の頭で考えようとする人すべてに開かれています。For everyone。

これは当たり前のようでいて、現代社会では忘れられがちな考え方かもしれません。
私たちはいつの間にか、学びを資格や肩書と結びつけて考えるようになりました。

しかし本来、学ぶことはもっと個人的で、もっと自由な営みだったはずです。

Catherine Project の話を読んでいて、いつか自分自身もそんな知的共同体を作ってみたいと思いました。
それは知識を教える場ではありません。
むしろ、一緒に考える場です。

AIがますます多くの答えを提供する時代だからこそ、人間同士が問いを持ち寄り、対話し、考える価値は高まるのかもしれません。

知的生活は学歴ではありません。
資格でもありません。
肩書でもありません。
実践です。

そして、その実践は誰にでも開かれています。

考えることに代替はない。

note に集まる本好きな人たちも、きっと無意識に理解しているんだと思います。
だからこそ私たちは、今日もnote を読み、本を開きます。◾️

参考資料:
The Great Books Are for Everyone
How Zena Hitz brings the humanities to thousands of people via the Catherine Project
JARED HENDERSON
JUN 20, 2026

https://open.substack.com/pub/tedgioia/p/the-great-books-are-for-everyone?r=1e0pnc&utm_medium=ios

私のSubstack(The Untranslatable)では、今回のようなテーマをさらにグローバルな視点から、英語でディープに考察しています。
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初出:note、2026年6月20日。Fabio Caipirinha の恒久アーカイブとして収録(本サイト掲載:2026年10月15日)。原文:https://note.com/proper_clam757/n/n5577b2865acb

カバー画像:パリ・ロダン美術館の《考える人》(CC BY 2.0, Wikimedia Commons/出典)

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