ーリード・ホフマン の投稿 「Theory of the Game」(ゲームのセオリー)から考える

40代後半になって、少しずつわかってきたことがあります。

人生の失敗の多くは、努力不足から生まれるわけではありません。
むしろ、間違ったゲームを真面目に続けてしまうことから始まるのではないかと思うのです。

2026年6月23日 に LinkedIn 共同創業者のリード・ホフマンが、Zynga 創業者マーク・ピンカスの新刊『Life at the Speed of Play』へ書いた序文を公開しました。

Idea Generators
When I meet founders and product managers, I typically ask them two questions: What game are you playing? What’s your theory of the game?
REID HOFFMAN
JUN 23, 2026

https://open.substack.com/pub/reidhoffman/p/idea-generators?r=1e0pnc&utm_medium=ios

その中に、ここ数年の私の思索と不思議なほど重なる問いがありました。

What game are you playing?
What’s your theory of the game?

「あなたは何のゲームをしているのか。
そして、そのゲームで勝つための理論は何か?」

一見すると、シリコンバレーの起業家向けの話に聞こえます。

しかし読み進めるうちに、これは起業家だけではなく、人生そのものに向けられた問いなのではないかと思うようになりました。

ホフマンが起業家に尋ねる二つの問い

ホフマンとピンカスは、2000年頃からインターネットの未来について議論を重ねてきたそうです。

当時はドットコムバブル崩壊の直後でした。
多くの人が「インターネットは終わった」と考えていた時代です。
しかし二人は違いました。
彼らは、インターネットの未来は情報そのものではなく、人と人とのつながりにあると考えていました。

ニュースサイトやオンライン百科事典が中心だったWeb 1.0から、人間関係やコミュニティが中心となるWeb 2.0へ。

その後、FacebookやLinkedInをはじめとするSNSが世界を変えていったことを考えると、彼らの見立てはかなり正しかったと言えると思います。

しかし今回、私が興味を持ったのは彼らの予言能力ではありません。

ホフマンが起業家やプロダクトマネージャーに必ず尋ねるという二つの問いでした。

まず、
What Game Are You Playing?
ホフマンが言う「ゲーム」とは、遊びのことではありません。

自分は何を目指しているのか。
誰と競争しているのか。
何を勝利条件としているのか。

その前提のことですね。
例えば、Google、Facebook、Amazonはすべて巨大なテクノロジー企業です。
しかし実際には、それぞれ違うゲームをしていますよね。

Googleは検索のゲーム。
Facebookはネットワークのゲーム。
Amazonは流通と規模のゲーム。

同じ業界に見えても、勝敗を決めるルールが違う。

だから戦略も違う。
必要な能力も違う。

まず自分がどのゲームをしているのかを理解しなければ、正しい努力もできません。

しかしホフマンは、さらに重要な問いを投げかけます。

What’s your theory of the game?
そのゲームで勝つためのあなたの理論は何か?
ホフマンはこう説明しています。

Your theory of the game is your mental model of how success happens in a given domain.

「ゲームの理論、Theory of the Gameとは、その世界で成功がどのように生まれるのかについての、自分なりのメンタルモデルです。」

さらに彼は、
What are the dynamics that underlie it?
とも問いかけます。
つまり、表面的な出来事の背後で、本当に何が動いているのか。

どのような力学が成功や失敗を生み出しているのか。
そこまで考えろということです。

例えばGoogleは、
「検索品質が勝敗を決める」
と考えた。

Facebookは、
「ネットワーク効果が勝敗を決める」
と考えた。

Amazonは、
「規模の経済が勝敗を決める」
と考えた。

どれも最初から正解だったわけではありません。
しかし彼らは、自分なりのTheory、セオリーを持っていた。
そして行動し、検証し、修正していったのです。
ホフマンがピンカスを高く評価している理由もここにあります。
彼は単なるアイデアマンではありません。

アイデアを生み出し、
試し、
学び、
そして捨てる。

ホフマンは、優れた起業家とは、アイデアを生み出す能力と同じくらい、アイデアを捨てる能力を持っている人だと語っています。

AIは一手を速くする

ここでホフマンはAI時代の話に移ります。
これまで価値だったのは、
「作れること」
でした。
コードを書けること。
ウェブサイトを作れること。
文章を書けること。

しかしAIによって、その状況は大きく変わりつつあります。

文章は生成できる。
画像も作れる。
動画も作れる。
アプリも作れる。

つまり、多くの人が「作れる人」になれる時代が来ているのです。
すると競争優位は変わります。

ホフマンは、
Can you build it?
ではなく、
Do you know what to build?
が重要になると言います。

作れるかどうかではない。
何を作るべきかを理解しているかどうか。
何を作りたいか。

だからTheory of the Gameがますます重要になるのです。

私が集めているもの

最近の私は、Ted GioiaやZena Hitz、Ray Dalio、Ryan Holidayなど、さまざまな人の文章を読んでいます。
以前は、彼らから知識を学んでいるのだと思っていました。

しかし今は少し違います。

私が本当に学んでいるのは、彼らが世界をどう見ているのかです。

Ted GioiaにはTed GioiaのTheory of the Gameがある。
Zena HitzにはZena HitzのTheory of the Gameがある。
DalioにはDalioのTheory of the Gameがある。
Ryan Holidayにもある。
だから面白いのです。

彼らは情報を提供しているのではありません。
世界を見るレンズを提供しているのです。

振り返ってみると、私はずっと、人々のTheory of the Gameを集めているのかもしれません。

ゲームを選ぶということ

そう考えると、最近私がよく考えている「Build Your Factory」という発想も、同じ話なのだと思います。

noteの記事を一本書く。
Substackに一本投稿する。
本を一冊読む。
映画を一本観る。

それぞれは小さな行動です。
チェスで言えば、一手です。
しかし私が本当に作りたいのは、その一手ではありません。

歴史、哲学、文学、映画、リーダーシップを横断しながら、自分なりのレンズを磨き続ける知的な工場です。

投稿一本一本は move です。
Factory が game です。

そして、そのFactoryをなぜ作るのかという世界観こそが、自分自身の Theory of the Game なのだと思います。

若い頃の私は、どう勝つかを考えていました。
今の私は、何のゲームをするかを考えています。
そして、そのゲームはどのように動いているのかという、自分なりのTheoryを持てるかどうかを考えています。

私は今、何のゲームをしているのだろうか。
そして、そのゲームはどのように動いているのだろうか。

自分なりのTheory of the Gameを持てているだろうか。

AIは、一手を速くしてくれます。
しかし、ゲームそのものを選んではくれません。

だからこそ、これからの時代に本当に重要になるのは、知識やスキルだけではなく、自分なりのゲームと、その理論を持つことなのかもしれません。◾️

私のSubstack〈The Untranslatable〉では、今回のようなテーマをさらにグローバルな視点から、英語でディープに考察しています。
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https://open.substack.com/pub/fabiocaipirinha


初出:note、2026年6月25日。Fabio Caipirinha の恒久アーカイブとして収録(本サイト掲載:2026年10月15日)。原文:https://note.com/proper_clam757/n/n7987cf756e06

カバー画像:トマス・エイキンズ《チェスをする人々》(1876年)(CC0, Wikimedia Commons/出典)

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