Rick Rubin(リック・ルービン)という音楽プロデューサーがいます。
私の HP でもこれまで触れてきました。
彼の活躍は音楽にとどまらず、最近は「人生のグル」みたいな位置付けです。
見た目もだいぶ仙人然としてきました。
赤いサングラス。(笑) パンク仙人。

ゆったりとした語り口が好きで、彼のポッドキャスト『Tetragrammaton』もよく聴いています。
番組については、note でも以前書いたことがあります。
彼の本も素晴らしいです。創作者はぜひご一読ください。
そんな Rick の番組に、ある作家がゲストとして来ていました。

Joseph Nguyen(ジョセフ・グエン)。
セルフ出版から出発し、SNS と Amazon を使って読者を増やし、ついには世界中に翻訳されるところまで行った人です。

この対談が良かったのは、精神論ではなく、出版のリアルが“順番”として語られていたから。
「どう書くか」だけでなく、「どう売るか」、そして「どうベストセラーまで運ぶか」(=流通・翻訳・世界展開)まで、全部つながっていました。
目 次
1) どう書いたか:タイトルは最後。章は“問い”。編集は最小。
タイトルは最後に“降ってくる”
章は「答え」ではなく「問い」でできている
編集は最小。“文才”より“温度”
2) どう売ったか:Amazon→TikTok→Amazon広告。導線の順番がある。
① Amazonで「買える状態」を作る(在庫を持たない)
② TikTokで、ほぼ「本を読むだけ」
③ Amazon 広告:キーワード+“他人の本に出す”
3) どうベストセラー化したか:「広げ方」の順番
影響者(本インフルエンサー)に当たりに行く
TikTok Shop/Shopifyで「その場で買える」を作る
出版社の価値は「マーケ」ではなく「配本(書店流通)」目的で
翻訳は“向こうから来ない”。だから自分から取りに行った。
4) noteに転用するなら:この対談から持ち帰る「実装チェックリスト」
おわりに:導線をどうつなぐか
1) どう書いたか:タイトルは最後。章は“問い”。編集は最小。
タイトルは最後に“降ってくる”
書き始めた時点では「本になる」とすら思っていなかっそう。本人の感覚では執筆は、“受信(transmission)”に近いといいます。
Joseph は最初にタイトルを決めませんでした。
最初に浮かんだものは全部ボツに。
そして散歩中かシャワー中だったかに、突然降ってきたのが、
Don’t Believe Everything You Think
(考えたこと全部を信じるな)。
挑発的なのに攻撃じゃない。
耳が痛いのに、なぜか開きたくなる。
タイトルは入口であり、入口が勝つと中身が読まれる。
章は「答え」ではなく「問い」でできている
Joseph は「書くときに、答えを持っていない」と言います。
持っているのは質問だけ。
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苦しみの根は何か
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なぜ考えすぎるのか
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思考を手放したら、何を聞くのか
結果として、章が“問い”そのものになった。
これはnoteでも強い型だと思います。
読者は説教より、「一緒に考える入口」に引き寄せられますよね。
編集は最小。“文才”より“温度”
彼は編集が好きではないと言いきります。
編集は必要なときだけ最小限。
文章の巧さより、言葉の“温度”を守るためです。
ここが大事で、整えすぎると初速が死ぬ。
短い文章ほど、編集で無味になる。
noteでも「上手い文章」より「生きてる文章」が読まれてます。
2) どう売ったか:Amazon→TikTok→Amazon広告。導線の順番がある。
ベストセラーは“奇跡”じゃなく、導線だというのが Joseph の主張です。
彼がやったのは、乱暴に言えばこの 3 ステップでした。
① Amazonで「買える状態」を作る(在庫を持たない)
最初は Amazon のみ。セルフ出版でオンデマンド印刷。
注文が入ったら印刷され、発送される。著者は在庫も倉庫も抱えない。出版が「大勝負」ではなく「テスト」になる。ここが現代ぽい。
② TikTokで、ほぼ「本を読むだけ」
次に見つけた“勝ち筋”が、拍子抜けするほどシンプル。
TikTok で朗読。スマホを置いて、30秒〜1分、本をそのまま読み上げて、TikTok に投稿。高い制作も演出もいらない。これを1日3回。
要約ではなく本文を。
「本を売るために、本を読ませる」。
逆に見えるけど、いちばん正しかったと振り返っています。
③ Amazon 広告:キーワード+“他人の本に出す”
広告の話が、かなり実務的で良かったです。
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キーワード広告:
「anxiety(不安)」「overthinking(考えすぎ)」「stress(ストレス)」など、悩んでいる人が打つであろう言葉に出す。
彼は「自分自身が人生に悩んでいたから」、自分ならどう検索するかで選んだといいます。 -
もっと効いたのは「他人の本のページに出す広告」:
Amazon の商品ページの下にある「おすすめ枠(スポンサー)」に自分の本を置く。
例として挙がったのが『The Power of Now』『Atomic Habits』など。
読者がいる場所に行く、ではなく、読者が買う棚の前に立つ。
これが“見つけられる導線”。
3) どうベストセラー化したか:「広げ方」の順番
ここが今回いちばん学びが多かった部分です。
売れた“後”に何が起き、どう拡張したか。
影響者(本インフルエンサー)に当たりに行く
彼はノンフィクションを紹介するアカウントに連絡し、本を送りました。
場合によっては費用も払ったそう。
重要なのは、良いレビューを強制しないこと。
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褒める人もいれば、合わないと言う人もいる
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それでもいい(本は全員に向かない)
露出を買うのではなく、「読まれる場所に置く」。
本が弱ければ終わる。本が強ければ波が起きる。そこはフェアに向き合ったといいます。
やはり良いものを書くということ。
TikTok Shop/Shopifyで「その場で買える」を作る
TikTok Shop が出てからは、動画に購入リンクを付けて、その場で買えるようにしたそう。裏側は Shopify +倉庫(3PL) で発送。さらに原価を下げるため、印刷もAmazon 以外を学んでいった。
ここまで来ると、Joseph は “著者兼D2C事業者” です。
著者がマーケと販売を持つ時代が来ている。
出版社の価値は「マーケ」ではなく「配本(書店流通)」目的で
そして後に出版社と組む。
ただし理由は「出版社が宣伝してくれるから」ではなく、大手書店(Barnes & Noble、Target、Walmart など)に入れるから。
彼の整理が鋭い。
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オンラインは「置いただけでは売れない」 → マーケが必要
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書店は「置かれれば見られる」 → 配本が価値
出版社は万能ではなく、機能として使い分ける相手になる。
リアリティを伴う戦略です。いわれてみればそうだな、という感じです。
翻訳は“向こうから来ない”。だから自分から取りに行った。
本が売れていても、翻訳に関しては、エージェントは勝手に群がってこなかった。「来るはず」と思っていたのに、誰も来ない。だから彼は自分から行ったといっていますそう。
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エージェントを探して
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「本は伸びている。海外展開を手伝ってほしい」と持ちかけ
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ブックフェア(フランクフルトなど)経由で翻訳権が広がっていったと。
ただし代償もある。
翻訳版では、カバーもタイトルも編集も現地判断で変わる。
自分のコントロールは薄くなる。
でも市場が違うなら、それが合理的だという割り切り。
興味深いのは、最も強い市場がインドだったこと。
精神性との相性や英語の通用度など、文化と市場の噛み合わせがあったのだろう、とのこと。
これは世界展開って欧米だけじゃないってことですよね。
相性の良い場所で先に火がつくことがある。ここも現実的です。たしか、『IKIGAI』という本も一番売れているのはインドと聞いたことがあります。
4) noteに転用するなら:この対談から持ち帰る「実装チェックリスト」
最後に、noteで使える形に落とします。
書き方
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タイトルは最後でいい(売り文句にしない)
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見出しは「問い」に寄せる(答えで殴らない)
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文章は巧くより、温度(勢い)を残す
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書くフェーズでは情報断食(文体が汚染されるのを防ぐ)
売り方
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まず「買える状態」を作る(Amazon等)
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次に「読ませる」:30秒で本文を見せる(要約より強い)
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そして「見つけられる」:検索語・棚(他人の本の隣)に立つ
伸ばし方
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出版社は“宣伝”より“配本”目的で使う
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翻訳・海外は待たない。自分から取りに行く(ただしコントロールは減る)
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市場は欧米だけではない。相性の良い場所が先に伸びることがある
おわりに:導線をどうつなぐか
直感で書き、30秒で読ませ、検索で見つけさせ、配本で広げる。
ベストセラーは才能ももちろん必要。
でもそれだけじゃない、仕組みも大事ということですね。■