奪われるのは、あなたの “決める力”。

AIの話って、だいたいこうなりませんか?
「何の仕事が消える?」
「生産性が上がる?」
「年収はどうなる?」

でも、投資家 Misha Saul の予測を読んで、私は別の恐怖を感じました。

AI は“能力”より先に、あなたの“責任”を奪う。
もっと正確に言うと、あなたが決めない人生 が、めちゃくちゃ自然に始まる。


AI時代の格差は「金」ではなく、決める人/委ねる 人で生まれる

この記事の核心はここです。

  • Deciders(自分で決める人)

  • Delegators(決定を委ねる人)

 

この差が広がる。

そして地味に怖いのは、後者になるのが “楽” すぎることです。

なぜならAIは、あなたの代わりにこう言ってくるからです。

  • その上司への返信、こう書けば角が立ちません

  • この転職は、リスクが小さいです

  • あなたの性格だと、こちらの生き方が向いています

  • 今日は休んだほうが効率的です

  • この人と付き合うと幸福度が上がります

…便利。

でもこれらは、全部「決断」なんですよね。

AIが “提案” から “実行” に進んだ瞬間、自分の人生は静かに他人事になります。

 


1. AI で起きる社会変化は、実は3つにまとめられる

Misha Saul は8つ予測しますが、私は3つに圧縮できると思いました。

① 力が極端に偏る(巨大か、少人数か。真ん中が死ぬ)

AI が入ると、調整・連絡・監督みたいな「組織を重くする摩擦」が減ります。
するとどうなるか。

  • 超巨大企業は、さらに巨大化する

  • 一方で、個人や数人チームが“組織級の力”を持つ

  • 中間がいちばん苦しくなる(そこそこ大きい会社/ほどほどの管理職/無難な調整役)

この「真ん中が痩せる」感じ、すでに始まってませんか。

 

② 世界は一つに見えるのに、現実はバラバラになる

AI 翻訳で、言語の壁が薄くなります。

誰でも世界に届く。

でも同時に AI は、情報をあなた専用にします。

ニュースも、論点も、「真実の見え方」も。

結果、こうなります。

同じ言葉を話しているのに、同じ世界を見ていない。

人は制度やメディアより、少数の「この人は本物」という人間の声に寄っていく。

これは、私たちの“信頼の仕組み”が変わるという話です。
 

③ 一番まずいのは「責任の委任」

ここが本題です。

昔は、だいたいこうでした。

自分で選ぶ → 自分でやる → 自分が責任を取る

AIはここを分断します。

AIが選ぶ(提案する) → AIがやる(実行する) → でも責任だけ人間に残る

しかも、失敗したときに言い訳ができる。

「モデルがそう言ったから」
「おすすめに従っただけ」
「最適解だったはず」

これが積み重なると、何が起きるか。

判断力が落ちます。

責任感が薄くなります。
そして“自分の人生”の感覚が弱くなります。

便利さの代償は、ここにあります。

 


2. 生活レベルで何が起きるか

プライバシーは“終わる”というより「前提が変わる」

AIエージェントがあなたの代わりに動くほど、あなたの行動ログは集まります。
職場でも「監視」というより副産物として、

  • どれだけメールしたか

  • どれだけ会議したか

  • どれだけ作業したか

が、見えるようになる。

見えない前提で働くのは、もう危ない。

つまり、自分の仕事ぶり(行動ログ)が上司や会社に“見えない”前提で働くと、評価・リスク管理・コンプラの仕組みが変わったときに一発で不利になる、ということですね。
 

お金は「幸福」より「ステータス」に吸われやすい

AI で豊かになっても、満足感が比例するとは限らない。

余剰は、結局こういうゼロサムに流れる。

  • 一等地

  • 高級ブランド

  • “上位〇%”の体験

 

つまり、地位財(positional goods)がさらに高騰する、という見立てです。

 


3. じゃあ、どうすれば“委ねる側”に転落しないのか

答えは、驚くほどシンプルです。

「最終決定だけは手放さない」
これだけで世界が変わります。
 

私は自分用に、4つのルールを考えてみました。

 

ルール1:人生の重要領域は、AIに“決めさせない”

対象はこの4つだけでいい。

  • 健康

  • お金

  • 人間関係

  • キャリア

AI は「選択肢を出す」「調べる」「比較する」まで。

最後に決めるのは自分

 

ルール2:1日1回、「自分の頭」で考える時間を確保する

10分でもいいので、AI なしで、メモを1枚書く。

  • 今日は何を感じたか

  • 何に違和感があったか

  • 何を選ぶべきか

これが“主体性の筋トレ”になります。

私は普段から日記をつけているのですがこれが結構大事だと感じます。

 

ルール3:共有現実を作る(信頼する情報源を“自分で”選ぶ)

アルゴリズムに任せない。

信頼できる書き手/一次情報を、少数でいいから固定する。
反対意見を1本だけ読む。偏り対策です。

 

ルール4:身体と親密さを中心に置く

AIが強くなるほど、逆に価値が上がるのはここです。

  • 身体感覚

  • 対面の親密さ

  • 内面の豊かさ

AI は、あなたの代わりに“生きる”ことはできない。

 


AI時代に残るのは「自分が決めた」という感覚

AI はすごい。

でも、すごいほど危ない。

仕事が奪われるより前に、もっと静かなものが奪われる。

「私が決めた」という感覚です。

だから覚えておきたいのはこの二つ。

  • AI には、仕事を任せる

  • でも、人生は任せない

この境界線を引ける人が、AI 時代の Deciders自分で決める人)になると思いました。■ 

 


参考

Misha Saul, “How AI Will Reshape Society: Eight predictions,” City Journal, 2026-01-22.  

https://www.city-journal.org/article/artificial-intelligence-society-future