※本記事は Guardian 紙(2025年12月13日)掲載記事をもとに、note向けに再編集しています。

この時期、贈り物に本を選ぶのも素敵ですよね。

本を贈る行為は、相手の「時間」と「世界の見え方」に触れることでもあると思います。

皆さんならどんな一冊にしますか?

 

世界的に著名な作家たちは、どんな本をこれまでプレゼントしてきたのでしょう。

英・Guardian紙に面白い特集記事が出ていましたので、今回はその記事から紹介したいと思います。

「何度も、何人にも、配り続けてきた一冊がある」

第1回は、まず下記の10人の作家たちから。

 

■ 紹介されている作家たち:

ロバート・マクファーレン
エリフ・シャファク
コルム・トビーン
ジャネット・ウィンターソン
フローレンス・ナップ
ヌサイバ・ユーニス
フランク・コットレル=ボイス
マイケル・ローゼン
キャサリン・ランデル
マックス・ポーター

 


ロバート・マクファーレン

(英国を代表する自然文学作家/『Underland』『Is a River Alive?』)

推薦書:ナン・シェパード『いきている山(The Living Mountain)

「私はプレゼントに本を贈るのが好きで、他のものはほとんど贈らない。

 アイスランドには、クリスマス・イブに本を贈り、そして読む『ヨーラボゥカフロゥズ』という習慣があるが、私はこれを強く支持している。

 この本は、私が最も多く贈ってきた一冊だ。

 1940年代に書かれ、1977年まで出版されなかった、薄く、しかし完全無欠の傑作。

 ケアンゴーム山地について書かれている、という意味では、『ミセス・ダロウェイ』がロンドンについての小説であるのと同じだ。

 場所に深く根を下ろしながら、知、存在、そして『愛』という問いへ旋回していく。」

 

 

 


エリフ・シャファク

(トルコ系英国作家/『The Forty Rules of Love』)

推薦書:
・マルクス・アウレリウス『自省録』

・ビョン・チョル・ハン『疲労社会社会』『希望の精神』

「例年は小説を贈るが、今年は哲学書を考えている。

 ビョン・チョル・ハンは自らを『楽観的な難民』と呼ぶ思想家で、東西の哲学を横断する独自のスタイルを持つ。

 これらは陽気なホリデー読書ではない。

 だが、ノイズと気散じに満ちたデジタル世界で『思考について考える』ための、最良の伴走者になる。

 人類の未来を気にかける人に贈りたい。」

 

 

 

コルム・トビーン

(アイルランド出身の世界的作家/『ブルックリン』『魔術師』)

推薦書:フォード・マドックス・フォード『よき兵士(The Good Soldier)』

「流行遅れにならない贈り物の本が一冊ある。

 それが『よき兵士』だ。

 実のところ、これは兵士の話ではほとんどない。

 だがタイトルは巧妙な目くらましとなり、

 物語は油断した読者に静かに噛みついてくる。

 語りはねじれ、語り手は知りすぎているのか、知らなすぎるのか分からない。

 やがて『裏切り(今で言うチート)』の恐ろしくも巧妙な構造が明らかになり、読者は爆発的な秘密を共有した気分になる。クリスマスに最適だ。」

 

ジャネット・ウィンターソン

(『オレンジだけが果物じゃない』)

推薦書:
・若い世代へ:イタロ・カルヴィーノ『見えない都市』

・同世代へ:ロバート・マクファーレン『Is a River Alive?』

「若い人には『見えない都市』を贈る。

 独立したミクロフィクションの連なりでありながら、

 現実とは何か、という問いを深めていく。

 この本は楽観的でもある。

 力は個人にあり、エネルギーの置きどころを知れば、私たちは世界を変えられる。

 同世代には、その人に『効く』と思う本を贈る。

 本は娯楽以上のものだ。友人を挑発し、揺さぶることを恐れるべきではない。」

 

フローレンス・ナップ

(作家)

推薦書:クレア・キーガン『Foster(フォスター)』

「あまりにも多くの友人に贈ってきたので、すでに持っている人に重ねて贈っていないか心配になるほどだ。

 88ページという短さは、贈り物として理想的だ。

 重くならず、その簡潔さ自体が特別さを物語る。

 ネグレクトの家庭から温かな家へ預けられた少女の夏。

 子どもの無垢な観察が、ときに大人以上に鋭い真実を照らし出す。」

 

参考)https://www.hayakawabooks.com/n/ncc75bf626a2e

ヌサイバ・ユーニス

(政治学者・作家)

推薦書:アルンダティ・ロイ『Mother Mary Comes to Me』

「この本は、作家アルンダティ・ロイの人生を描いた、美しく、勇敢で、きわめて誠実な回想録だ。 

 母メアリーは『私の避難所であり、嵐でもあった』。

 著名なフェミニストでありながら、揮発的で脅威的な母。

 ロイは彼女を単純化することなく、自身の人生が

 拒絶であり、同時にオマージュであったことを描く。

 本書は躊躇なく政治的であり、今の世界を語れる作家の声として、私はこれを贈り続けている。』

 

フランク・コットレル=ボイス

(児童文学作家/『Millions』)

推薦書:テリー・プラチェット『Truckers』

「『たのしい川べ』が出た当初、評価は割れた。

 A.A.ミルンはその天才性を擁護し、「人格を測るテスト」として人に配ったという。

 私はテリー・プラチェットの『Truckers』で同じことをしている。

 デパートを宇宙のすべてと信じる小人たちの物語。

 消費主義、性差別、教条主義への風刺であり、

 何より温かく、可笑しく、賢い。』

 

マイケル・ローゼン

(詩人・児童文学作家)

推薦書:サラ・クロッサン『Where the Heart Should Be』

「アイルランドの飢饉の時代を舞台にした自由詩の小説だ。

 悲劇と連帯に真正面から向き合う。

 YA(ヤングアダルト)と呼ばれることもあるが、

 年齢を問わず、深く心を打つ一冊だ。」

 

キャサリン・ランデル

(児童文学作家/『The Rooftoppers』)

推薦書:
・アレクサンドル・デュマ『モンテ・クリスト伯』

・シャーナ・ジャクソン『High Rise Mystery』シリーズ 

「読書好きな年長の子どもには『モンテ・クリスト伯』を。圧倒的に分厚いが、史上最も完璧な冒険小説のひとつだ。

 一度つかまれると、めまいがするほどの喜びを味わう。

 読書にまだ前向きでない子には『High Rise Mystery』。

 機知に富み、これを嫌いな子どもに、私はまだ出会っていない。」

 

マックス・ポーター

(『Grief Is the Thing with Feathers』)

推薦書:アリス・オズワルド『Dart』

「20年以上、最も多く贈ってきたのがこの詩集だ。

 一本の川を、多声的な詩へと翻訳した奇跡の作品。

 生態学的にも哲学的にも、ますます急進的で、一行一行が読む者を生き返らせる。

 詩を読まない人にも、詩の専門家にも贈る。

 川は誰の所有物でもない。だから、この本も回っていってほしい。」

 

※本連載は全3回です。
**第2回はまた違う角度の本たちをご紹介します。▪️

元記事:
‘This extraordinary story never goes out of fashion’: 30 authors on the books they give to everyone  

 

/ Reading