昨日、SubstackのAI判定で、自分の英語エッセイに「AI 100%」と表示されました。
正直、少し腹が立ちました。
論点は自分で考えている。過去に保存した資料を掘り起こし、別の資料とつなぎ、何を残すかもかなり考えた。自分で言葉を選んで書いてみた。それなのに、完成した文章だけを見ると「Human 0%」と出る。。
最初に考えたのは、どうすればもっと人間が書いた文章にできるか、でした。それ自体は今も大切だと思っています。AI特有の整いすぎたリズムや、きれいすぎる対比は削るべきです。
ただ、少し考えているうちに、別の問いの方が気になってきました。
そもそもAI時代の「本物らしさ」とは何なのでしょうか。
たまたまその後、Harvard Business SchoolのCold Callで、Harvard Art MuseumsのAI 活用事例を聞きました。
美術館のマーケティングチームは、所蔵作品を紹介するAI アバターを使った実験を行っています。興味深かったのは、担当者のJohn Connollyが、AIを使うこと自体よりも「どこで、どう見せるか」をかなり慎重に考えていたことです。
AIを使った実験では、それがAI であることを隠さない。一方で、寄付者へのメールのように、人と人との関係そのものが価値を持つコミュニケーションを、裏でAI に書かせることには強い警戒感を示していました。相手が後からそれを知れば、便利だったというより「自分に向けられた言葉ではなかった」と感じるかもしれないからです。関係性への信頼を失う、ということですよね。
ここで、自分のAI判定の話とつながりました。
問題は「AIを使ったか、使わなかったか」だけではありません。
調査、検索、比較、反論の生成、構成の検討。こうした工程では、AIは非常に役に立ちます。むしろ使わない理由がない場面も多い。
しかし、文章の声そのものや、読者との関係、自分の経験をどう意味づけるかという部分までAIに滑らかに代行させると、別のものが失われる可能性があります。
それは、誤字や不器用さではありません。
「この人がここで何を考えたのか」という痕跡です。
私は最近、Human Traceという考え方を気にしています。最初に何を考えていたか。AIから何を受け取ったか。何を捨てたか。なぜ最後にこの結論を選んだのか。
完成品だけでなく、その判断の経路が見えることに、AI 時代の新しい真正性があるのではないかと思っています。
※ 真正性(しんせいせい)とは、人、モノ、データ、記録などが「嘘偽りのない本物であること」、およびそれを確実に証明できる性質のこと。英語では「Authenticity(オーセンティシティ)」と呼ばれます。
だから、真正性を「人間だけで作ったもの」と定義するのは、少し違う気がします。今後、多くの知的生産は人間とAIの共同作業になります。そこでAIを使っていないふりをしても仕方がありません。
むしろ重要なのは、境界が読めることです。
どこでAIを使ったのか。
どこからが自分の判断なのか。
誰の経験が含まれているのか。
そして、最後に誰が責任を引き受けるのか。
私はこれを Authenticity Boundary、真正性の境界、と呼んでみたいと思います。
信頼が重要になる仕事ほど、AIの役割は見える方がいい。そして、人間の声そのものが価値になる場所では、効率のためにその声まで置き換えない。
これは文章だけの話ではないでしょう。
上司から部下へのフィードバック、顧客への謝罪、学生へのコメント、寄付者への手紙。どれもAIで「より上手に」書けるかもしれません。しかし、受け取る側が求めているのは上手な文章だけではありません。その人が自分に向き合ったという事実でもあります。
昨日の文章制作にはもちろんAIは活用しました。
リサーチや資料の要約、文章の推敲にも使いました。
でも、大元のアイデアや切り口、実際の言葉の選択など、私自身がタイプして書いたものです。
AI Detector のPangramによる「AI 100%」という判定は、今でもあまり気持ちのよいものではありません。
でも、次に同じ表示を見たとき、AI 使用率だけを下げようとは思わないです。
それよりも、自分の文章を読み返して考えたい。
ここに、自分が考えた跡は残っているか。
AI 時代の「本物らしさ」は、案外ここから始まるのかもしれません。◾️
参考資料:
Harvard Business School, Cold Call, “How a Museum Marketing Team Used AI to Bring People Closer to Art,” 21 July 2026.
https://hbr.org/podcast/2026/07/how-a-museum-marketing-team-used-ai-to-bring-people-closer-to-art
Michael Wade & Jochen Wirtz, “Responsible AI Is Becoming a Growth Strategy,” Harvard Business Review, 21 July 2026.
https://hbr.org/2026/07/responsible-ai-is-becoming-a-growth-strategy
初出:note、2026年8月2日。Fabio Caipirinha の恒久アーカイブとして収録(本サイト掲載:2026年10月15日)。原文:https://note.com/proper_clam757/n/n453cbb235d5c