『トイ・ストーリー5』の公開に合わせて、David PerellがPixarの脚本家・監督Andrew Stantonにインタビューしていました。
Stantonは『トイ・ストーリー』シリーズをはじめ、『ファインディング・ニモ』、『WALL-E』など数々の名作を手がけ、30年以上にわたってPixarを支えてきたクリエイターです。
対談では脚本術やAIまで幅広い話題が語られましたが、私の心に最も残ったのは、創作そのものに対する彼の考え方でした。
Stantonはこう語ります。
“I want it to be about something.”
私は、何かについての物語であってほしい。
派手な設定でも、巧妙などんでん返しでもありません。
まず、「この物語は何を語ろうとしているのか」。
その問いから、すべてが始まると言います。
彼が最も影響を受けた創作論として挙げるのが、Lajos Egriの古典『The Art of Dramatic Writing』です。
『ファインディング・ニモ』では、その答えを最後に一文へと凝縮しました。
“Fear denies a good father from being one.”
恐れは、善良な父親になることを妨げてしまう。
この一文にたどり着くまでに、何年も書き直したそうです。
しかし、私がさらに惹かれたのは、その先でした。
Stantonは創作を「発見」の仕事だと言います。
“I’m a big believer that a really great story already exists out there.”
本当に優れた物語は、すでにどこかに存在していると私は信じています。
彼は創作を考古学の発掘にたとえます。
最初は骨が二本しか見つからない。
掘り進めるうちに全体像が見えてくる。
ティラノサウルスだと思っていたものが、実はステゴサウルスだったと気づくこともある。
そのとき必要なのは、最初の計画を守ることではなく、見つけた真実に合わせて、物語を書き直す勇気だといいます。
この話を聞きながら、私は日本の仏師に伝わる有名な逸話を思い出しました。
金剛力士像を彫った仏師は、
「仁王様は最初から木の中におられた。私は余分な木を削ってお出ししただけです。」
と語ったと伝えられています。
[画像省略:金剛力士像・鎌倉時代]
Andrew Stantonもまた、ミケランジェロの有名な言葉を引用します。
“The statue is in the marble; I just uncover it.”
彫像はすでに大理石の中にある。私はそれを掘り出しているだけだ。
時代も文化も違います。
それでも、優れた創作者たちは不思議なほど似たことを語ります。
創作とは、何もないところから作ることではない。
まだ見えていないものを、少しずつ現していく営みなのだ、というんですよね。
もちろん、その道は簡単ではありません。
Stantonは創作に悩む人へ、こんな言葉を送っています。
“Just write the sentence.”
そして続けます。
“It’s going to be bad.”
「まず一文を書きなさい。最初はきっとひどい。」
さらに彼は言います。
“Writing is rewriting.”
書くこととは、書き直すこと。
最初から完成形を目指すのではなく、何度も削り、磨き、掘り進める。その先でようやく、本当に書きたかった物語が姿を現すのだと。
対談の最後、Stantonは創作を志す人へ一つの問いを投げかけます。
“What do you have that’s worth telling?”
あなたには、語る価値のあるものがありますか。
そして、こう締めくくります。
“The telling is just as important as the content.”
何を語るかと同じくらい、どう語るかが重要なのです。
AIがどれほど進化しても、この問いは変わらないんだと思います。
今日の学び
創作とは、技術ではない。
語るべきものを見つけること。
そして、それを最後まで掘り続けること。
Pixarが30年以上にわたって私たちを魅了し続けている理由は、その創作に対する誠実な姿勢そのものにあるのだと思います。◾️
参考:
トイ・ストーリー 5
https://www.disney.co.jp/movie/toy5
初出:note、2026年6月27日。Fabio Caipirinha の恒久アーカイブとして収録(本サイト掲載:2026年10月15日)。原文に掲載されている第三者の画像は、権利上の理由により本アーカイブでは省略しています。原文:https://note.com/proper_clam757/n/n73e3b3330a00